194 / 404
第二部
<恐怖>を知らない者に
しおりを挟む
この種の<戦略>は、フィクションのように一朝一夕で成立するものではありません。彼我の戦力差を詳細に検討し、相手の戦術を予測し、こちらが取りうる戦術を徹底性に検証し、その上で、地理や気象といった様々な条件を徹底的に調べ上げたことでようやく構築の準備に入れるんです。
その場の思い付きでできるようなことではありません。
しかし残念ながら現状では、戦略を立てられるような状況にさえないのが現実。今は<戦略を立てられるようにするための前段階>でしかない感じですね。
ですが、焦っても仕方ありません。焦って準備も不十分なままで攻勢に出るのはただの<運任せ>というものでしょう。蛮勇以外の何物でもない。
<勇気>と<無謀>を履き違えた英雄的行為で犠牲を出すのは犯罪的ですらある。
<命を戦場に送り出す者>は、それをわきまえないといけないんです。
『ムカつく相手は殺せばいい』
で戦争を仕掛けるような者はそれこそ<世界の敵>でさえあると言えるでしょう。無駄な血を流させ命を喪わせるのですから。
私達は、<ゴヘノヘという存在>をよく知らなければならない。必要以上に恐れず、かつ侮らず。そのためにも、ゴヘノヘ御輿を用いたシミュレーションを繰り返し、経験を積み、問題点を客観的に洗い出し、精度を上げていく。
そうしてようやく、次の段階へと移れる。
地球人も、途方もない時間を費やし、あまりにも大きすぎる犠牲を出しながら、それを学んできた。せっかくそういう先例があるのですから、活かさない手はない。
「これを実際に使って、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>とぶつけると、大変な迫力になるでしょうね。
そしてラレアトも知ってください。<ゴヘノヘの恐ろしさ>を、<恐怖>を知らない者に勝利はありません。ゴヘノヘが脅威なのは、ゴヘノヘ自身が<恐怖を知る者>だからです。恐怖を知らず無謀なだけなら、<落とし穴>の時点で決着がついていました。しかしゴヘノヘは、<未知の脅威に対する恐怖>を知るからこそ、落とし穴の存在を察し、的確にそれを躱してみせた。私はその事実に対して敬意さえ払わずにいられません」
私のその言葉は今のラレアトには難しくてよく分からなかったようです。実は彼女ももう成体と言ってもいいんですが、私から見るとまだまだあどけない感じですから。
「ウ~ン……?」
首を傾げながら腕を組みます。そんな様子も愛らしい。
「うふふ♡」
私は思わず笑みがこぼれてしまいます。
本音を言えば、彼女のようなあどけない者が<戦い>などというものを意識せずに済めばそれが理想ではあります。ですが残念ながら現時点ではそれは望むべくもない。ゴヘノヘは紛れもなく現実に存在する脅威であり、それから目を背けるのは自ら死を選ぶのと同義なのですから。
その場の思い付きでできるようなことではありません。
しかし残念ながら現状では、戦略を立てられるような状況にさえないのが現実。今は<戦略を立てられるようにするための前段階>でしかない感じですね。
ですが、焦っても仕方ありません。焦って準備も不十分なままで攻勢に出るのはただの<運任せ>というものでしょう。蛮勇以外の何物でもない。
<勇気>と<無謀>を履き違えた英雄的行為で犠牲を出すのは犯罪的ですらある。
<命を戦場に送り出す者>は、それをわきまえないといけないんです。
『ムカつく相手は殺せばいい』
で戦争を仕掛けるような者はそれこそ<世界の敵>でさえあると言えるでしょう。無駄な血を流させ命を喪わせるのですから。
私達は、<ゴヘノヘという存在>をよく知らなければならない。必要以上に恐れず、かつ侮らず。そのためにも、ゴヘノヘ御輿を用いたシミュレーションを繰り返し、経験を積み、問題点を客観的に洗い出し、精度を上げていく。
そうしてようやく、次の段階へと移れる。
地球人も、途方もない時間を費やし、あまりにも大きすぎる犠牲を出しながら、それを学んできた。せっかくそういう先例があるのですから、活かさない手はない。
「これを実際に使って、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>とぶつけると、大変な迫力になるでしょうね。
そしてラレアトも知ってください。<ゴヘノヘの恐ろしさ>を、<恐怖>を知らない者に勝利はありません。ゴヘノヘが脅威なのは、ゴヘノヘ自身が<恐怖を知る者>だからです。恐怖を知らず無謀なだけなら、<落とし穴>の時点で決着がついていました。しかしゴヘノヘは、<未知の脅威に対する恐怖>を知るからこそ、落とし穴の存在を察し、的確にそれを躱してみせた。私はその事実に対して敬意さえ払わずにいられません」
私のその言葉は今のラレアトには難しくてよく分からなかったようです。実は彼女ももう成体と言ってもいいんですが、私から見るとまだまだあどけない感じですから。
「ウ~ン……?」
首を傾げながら腕を組みます。そんな様子も愛らしい。
「うふふ♡」
私は思わず笑みがこぼれてしまいます。
本音を言えば、彼女のようなあどけない者が<戦い>などというものを意識せずに済めばそれが理想ではあります。ですが残念ながら現時点ではそれは望むべくもない。ゴヘノヘは紛れもなく現実に存在する脅威であり、それから目を背けるのは自ら死を選ぶのと同義なのですから。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説


異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。


クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる