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第二部
作業後の余興
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私がそんなことを考えている間にも<ゴヘノヘ御輿>の建造は着々と進みます。
そして、一日の作業が終わると酒宴が開かれる。
で、
「やるか!?」
「オオ!?」
伍長とブオゴの勝負が始まって、皆の余興になる。
さらに最近では、希望者が勝手に前に出てきて、次々と勝負を始めるんです。
さすがに猪人の相手ができるのは伍長か同じ猪人だけですが、<相撲>形式で、
『膝を着いた方が負け』
というルールを作ると、鼠人と兎人とで勝負をする者も出てきて、小柄で兎人以上に俊敏なことを活かして、兎人相手に勝ってしまう者が出たりと、大盛り上がりでした。
「オマエ、ナカナカヤルナ」
そう言って相手の鼠人を讃えたのは、兎人の<棟梁>ルッセンでした。そして相手の鼠人は、やはり<棟梁>のティクラ。それぞれ棟梁として場を盛り上げようと名乗りをあげた形ですね。
「アンタモナ」
ティクラも、さすがにヘトヘトに疲れた様子で、ルッセンを讃えます。正直、ギリギリの勝負でした。兎人も決して鈍重ではないので、あくまで、
『体が小さく俊敏な鼠人を捉えるのは容易じゃない』
という点が勝敗を決めた形でしたね。ルッセンの攻撃をティクラが躱しきって、僅かに体勢が崩れたところに膝の裏を突いてバランスを崩させた。
つまり、<膝カックン>です。
疲れてきてのそれだったから、支えきれなかったんでしょう。
「アンタ! スゴカッタヨ!!」
「オヤカタ! スゲエ!!」
ティクラのパートナーであるリトリトを先頭に、鼠人達が大興奮で迎えます。
体の大きな他の種族達に怯え、隠れるように暮らしていた彼らにとっては、同じく<狩られる側>だった兎人ではありながらも自分達よりも遥かに大きな相手に膝を着かせたのですから、これは大変なことでしょう。
一方、破れたりとはいえ、明らかに動きの点で不利な相手に健闘したルッセンも、
「ガンバッタネ」
タセルイが出迎え、続いて、
「オヤカタ! ツギハ、カテル!」
「オヤカタ! マケテナイ!」
仲間達が励ましてくれる。
ああ、本当に彼らは高潔な<人間>達だと思います。確かに文明や技術の点では彼らは地球人には遅れているかもしれません。けれど、だからといってそれがなんだと言うんでしょうか? 彼らはこんなにも自分をわきまえている。相手を敬い、讃える精神を持っている。
確かに、ノーラやレミニィのような存在に対しては必ずしも寛大ではなかったかもしれない。でもそれは、その時点までの彼らが手にできる<リソース>を思えば無理からぬものだったはずなんです。共倒れになるわけにはいかなかったから。
それが今では、多少のわだかまりは残しつつも、わざわざ追い討ちまでは掛けずにいられてる。
この事実を認めないことの方が、私は不実だと思うんです。
そして、一日の作業が終わると酒宴が開かれる。
で、
「やるか!?」
「オオ!?」
伍長とブオゴの勝負が始まって、皆の余興になる。
さらに最近では、希望者が勝手に前に出てきて、次々と勝負を始めるんです。
さすがに猪人の相手ができるのは伍長か同じ猪人だけですが、<相撲>形式で、
『膝を着いた方が負け』
というルールを作ると、鼠人と兎人とで勝負をする者も出てきて、小柄で兎人以上に俊敏なことを活かして、兎人相手に勝ってしまう者が出たりと、大盛り上がりでした。
「オマエ、ナカナカヤルナ」
そう言って相手の鼠人を讃えたのは、兎人の<棟梁>ルッセンでした。そして相手の鼠人は、やはり<棟梁>のティクラ。それぞれ棟梁として場を盛り上げようと名乗りをあげた形ですね。
「アンタモナ」
ティクラも、さすがにヘトヘトに疲れた様子で、ルッセンを讃えます。正直、ギリギリの勝負でした。兎人も決して鈍重ではないので、あくまで、
『体が小さく俊敏な鼠人を捉えるのは容易じゃない』
という点が勝敗を決めた形でしたね。ルッセンの攻撃をティクラが躱しきって、僅かに体勢が崩れたところに膝の裏を突いてバランスを崩させた。
つまり、<膝カックン>です。
疲れてきてのそれだったから、支えきれなかったんでしょう。
「アンタ! スゴカッタヨ!!」
「オヤカタ! スゲエ!!」
ティクラのパートナーであるリトリトを先頭に、鼠人達が大興奮で迎えます。
体の大きな他の種族達に怯え、隠れるように暮らしていた彼らにとっては、同じく<狩られる側>だった兎人ではありながらも自分達よりも遥かに大きな相手に膝を着かせたのですから、これは大変なことでしょう。
一方、破れたりとはいえ、明らかに動きの点で不利な相手に健闘したルッセンも、
「ガンバッタネ」
タセルイが出迎え、続いて、
「オヤカタ! ツギハ、カテル!」
「オヤカタ! マケテナイ!」
仲間達が励ましてくれる。
ああ、本当に彼らは高潔な<人間>達だと思います。確かに文明や技術の点では彼らは地球人には遅れているかもしれません。けれど、だからといってそれがなんだと言うんでしょうか? 彼らはこんなにも自分をわきまえている。相手を敬い、讃える精神を持っている。
確かに、ノーラやレミニィのような存在に対しては必ずしも寛大ではなかったかもしれない。でもそれは、その時点までの彼らが手にできる<リソース>を思えば無理からぬものだったはずなんです。共倒れになるわけにはいかなかったから。
それが今では、多少のわだかまりは残しつつも、わざわざ追い討ちまでは掛けずにいられてる。
この事実を認めないことの方が、私は不実だと思うんです。
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