獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

業の深さ

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現在、再生医療の発展によって、四肢欠損も、疾病による臓器の機能不全も、完全に復元することが可能です。よって、

<臓器移植用のスペアの臓器としてのクローン>

は存在意義を失っています。

しかし、それでも人間は<不老不死>を手に入れたわけじゃない。

ゆえに、擬似的にそれを達成しようとして、

『クローンを作り、自身の人格と記憶を移植して』

という形で不老不死(に近いもの)を実現しようと試みる者は後を絶たず、結果、違法に生み出されるクローンも、確認されているだけでも年に数人というレベルで誕生しているそうです。

地球人という種の業の深さを感じますね。

また、<不老不死>を願うだけじゃなく、

『オリジナルとクローンは別の存在である』

という法解釈を逆手にとって、自身が負っている膨大な負債や、それまでに犯した罪を消し去ろうとして、クローンに自らを移し変えようと試みる者もいるとか。

クローンを保護するための解釈そのものを悪用しようというのですから、本当にどこまでも悪辣極まりない。

ですが、人間の感覚というものはそんな機械的に割り切れるものでもない。

ほとんどの企ては、準備段階でAIの監視網に捉えられて未遂に終わりましたが、ごく僅かにクローンに人格と記憶の移植まで成功した例はあっても、負債や罪から逃れるためにはオリジナルの方が死ななければいけなかったものの、結局、踏み切れずに終わったそうです。

結果、負債や罪からは逃れられず、さらに<クローン製造の罪>まで上乗せされ、悔恨の日々を過ごすと。

まったくもって何をしているのか分かったものではありませんね。

老化抑制技術の進歩により健康寿命が百五十年を超えたがゆえに、<終身刑>ともなれば、刑に服する期間もそれだけ長くなる。

<刑務所>においては、それぞれ<家>が与えられ、一見すると普通の生活を送れているようにも見えつつ、その行動は常に監視され、制限され、

<規則正しい健康的な生活>

を求められる。

<法を蔑ろにする人間>

というのは、その多くが、

『自身が決めたルーティンをこなすことは得意でも、他人に決められたルーティンをこなすのは苦痛』

だったりするそうで、受刑者の大半が、

『もう戻りたくない』

と口にするとか。

日常生活ではほとんど感じることもない、

<AIによる監視>

も、刑務所内では否が応でも実感させられますし。

しかも、矯正プログラムの受講も義務ですから。

で、<義務>を果たさないと、その罪も加算されて刑期がさらに伸びる。

なお、死刑制度があった頃の<死刑相当の罪>を犯した者が受ける<矯正プログラム>というものはそれ以外のとはかなり違っていて、、

『死刑を廃止する引き換えに導入された』

という曰く付きのもので、これがまた、経験者によると、

『死んだ方がマシだ…!』

口にする者さえいるほどなのだとか。

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