186 / 404
第二部
スワンプマンとクローン
しおりを挟む
私は、惑星探査チーム<コーネリアス>に所属する<ビアンカ・ラッセ>の記憶も人格も備えています。
けれど、私は、きっと、<ビアンカ・ラッセ>ではない。
<ビアンカ・ラッセの記憶と人格を備えた別人>
なんです。
少なくとも、地球人の社会では、法律上、そう解釈される。
<記憶と人格を移植されたクローン>
と同じ扱いになるでしょう。それどころか、<透明な体>という、決定的な違いから、クローンとさえ見られないかもしれない。
それは、まぎれもない事実。
ですが、<法律的な解釈>はそうだとしても、<私>は、確かに今、ここにいる。ここにいて、生きている。その事実は変わりません。だとすれば、私は私として生きるだけです。
『お前は誰だ?』
と問われれば、私はためうことなく応えます。
「私は私です。他の何者でもない」
と。
地球人の社会で私の身分を証明するデータは存在しなくても、私は実際にこうしてここに存在し、生きているんです。
<スワンプマン>
そう呼ばれるものが、今なお議論が続けられています。
むしろ、クローンへの人格や記憶の移植が可能になったからこそ、盛んに議論されているものです。
その議論に対し、地球人類は、あくまで法律上の概念としてですが、一つの結論を提示しています。
『いかにオリジナルと同じ肉体を有し同じ人格を有し同じ記憶を持とうとも、クローンとオリジナルは別の存在である』
というものです。
これは、クローンを貶めるためのものではありません。むしろ逆です。保護するために必要な解釈だったんです。
なぜなら、クローンとオリジナルを<完全に同一のもの>として見做すなら、オリジナルが犯した罪に対する責任をクローンも負わなければいけなくなるからです。
クローン自身は、クローンとして生まれてくることを望んでいたわけではありません。なぜならば、クローンはそれだけではオリジナルと同じ人格も記憶も備えていないからです。技術的にそれらを<インストール>という形で移植しなければ、オリジナルと同一の人格も記憶も持ちえないことが分かっているからです。
ゆえに、思考実験としての<スワンプマン>とは厳密には別の存在だと言えるでしょう。スワンプマンはあくまで誕生したその瞬間からオリジナルと全く同一の存在であるとされているからです。
しかし、現実問題として<完全なスワンプマン>の存在はこれまで確認されていませんので、
<人格と記憶が移植されたクローンが最も近似な例>
として議論の対象にされるだけですね。
そして、
『オリジナルが犯した罪をクローンに問わない』
ために、
『オリジナルとクローンは別の存在である』
とされているんです。
現在、クローンを作ること自体が、<終身刑もありうる重大な犯罪>とされているからですね。
けれど、私は、きっと、<ビアンカ・ラッセ>ではない。
<ビアンカ・ラッセの記憶と人格を備えた別人>
なんです。
少なくとも、地球人の社会では、法律上、そう解釈される。
<記憶と人格を移植されたクローン>
と同じ扱いになるでしょう。それどころか、<透明な体>という、決定的な違いから、クローンとさえ見られないかもしれない。
それは、まぎれもない事実。
ですが、<法律的な解釈>はそうだとしても、<私>は、確かに今、ここにいる。ここにいて、生きている。その事実は変わりません。だとすれば、私は私として生きるだけです。
『お前は誰だ?』
と問われれば、私はためうことなく応えます。
「私は私です。他の何者でもない」
と。
地球人の社会で私の身分を証明するデータは存在しなくても、私は実際にこうしてここに存在し、生きているんです。
<スワンプマン>
そう呼ばれるものが、今なお議論が続けられています。
むしろ、クローンへの人格や記憶の移植が可能になったからこそ、盛んに議論されているものです。
その議論に対し、地球人類は、あくまで法律上の概念としてですが、一つの結論を提示しています。
『いかにオリジナルと同じ肉体を有し同じ人格を有し同じ記憶を持とうとも、クローンとオリジナルは別の存在である』
というものです。
これは、クローンを貶めるためのものではありません。むしろ逆です。保護するために必要な解釈だったんです。
なぜなら、クローンとオリジナルを<完全に同一のもの>として見做すなら、オリジナルが犯した罪に対する責任をクローンも負わなければいけなくなるからです。
クローン自身は、クローンとして生まれてくることを望んでいたわけではありません。なぜならば、クローンはそれだけではオリジナルと同じ人格も記憶も備えていないからです。技術的にそれらを<インストール>という形で移植しなければ、オリジナルと同一の人格も記憶も持ちえないことが分かっているからです。
ゆえに、思考実験としての<スワンプマン>とは厳密には別の存在だと言えるでしょう。スワンプマンはあくまで誕生したその瞬間からオリジナルと全く同一の存在であるとされているからです。
しかし、現実問題として<完全なスワンプマン>の存在はこれまで確認されていませんので、
<人格と記憶が移植されたクローンが最も近似な例>
として議論の対象にされるだけですね。
そして、
『オリジナルが犯した罪をクローンに問わない』
ために、
『オリジナルとクローンは別の存在である』
とされているんです。
現在、クローンを作ること自体が、<終身刑もありうる重大な犯罪>とされているからですね。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
異世界坊主の成り上がり
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ?
矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです?
本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。
タイトル変えてみました、
旧題異世界坊主のハーレム話
旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした
「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」
迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」
ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開
因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。
少女は石と旅に出る
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766
SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします
少女は其れでも生き足掻く
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055
中世ヨーロッパファンタジー、独立してます
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――


家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
オフィーリアへの献歌
夢 浮橋(ゆめの/うきはし)
恋愛
「成仏したいの。そのために弔いの歌を作ってほしい」
俺はしがないインディーズバンド所属の冴えない貧乏ギタリスト。
ある日部屋に俺のファンだという女の子……の幽霊が現れて、俺に彼女のためのオリジナルソングを作れと言ってきた。
祟られたら怖いな、という消極的な理由で彼女の願いを叶えることにしたけど、即興の歌じゃ満足してもらえない。そのうえ幽霊のさらなる要望でデートをするはめに。
けれど振り回されたのも最初のうち。彼女と一緒にあちこち出掛けるうちに、俺はこの関係が楽しくなってしまった。
――これは俺の、そんな短くて忘れられない悪夢の話。
*売れないバンドマンと幽霊女子の、ほのぼのラブストーリー。後半ちょっと切ない。
*書いてる人間には音楽・芸能知識は微塵もありませんすいません。
*小説家になろうから出張中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる