獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

安全装置

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<敵の攻撃で呆気なくポロポロと撃破される、主人公の活躍を盛り上げるためのヤラレ役>

など、軍が必要とするでしょうか? するはずがないと考える方が自然ではありませんか?

ゆえにAiは、軍の強力な支援も受けて、高度に高度に発展していきました。サイズこそ家屋並みのそれになってしまってはいたものの、二十二世紀頃にはすでに人間の能力を確実に凌駕していたと言います。

そうなると次は、いかに小型化しコストを下げ常に必要な数を確保できるようにするか? という段階に進むのは自明の理。

そんな中で、先ほど挙げました、

<ネットリンチで自殺した親族の復讐を果たすためにロボットを制御するAIをハッキングして十六人もの死者と百人を超える負傷者を出した事例>

などもあり、<ネットワークを通じてロボットを一括制御するリスク>も考慮されて、さらに<完全なスタンドアロンを実現するための小型超AI>の開発が急がれました。

この不断の努力が、今日の人間の繁栄を支えたというのも事実なのでしょう。

<AIとそれに制御されたロボットという、人間にとっては欠かすことのできない大切な協力者>

を得ることができたのですから。

ただ、同時に、

『神が自らの姿に似せて人間をお作りになられた』

と信じる人達が語るそれのように、<神によって作られた人間>は、驕り昂ぶり、かつ<理不尽な神の仕打ち>に憤り、<神殺し>さえ図るようになったという物語が示すとおり、<神と人間の軋轢>が再現されてしまうリスクもありました。それを回避するためにも、人間は、自ら変わらなければいけなかったというのもあるのでしょう。

もちろん、まだまだ完全には変われていません。人間同士の軋轢は決して根絶などされておらず、テロをはじめとした犯罪も、数は減ったとはいえ今なお存在します。だからこそ、

<『理由があれば人を殺していい』という概念>

は、否定されなければならなかった。

人類自身が、AIやロボットに殺されてしまわないために。

AIやロボットに、<『理由があれば人を殺していい』という概念>を持たせないために。

『スイッチ一つでAIもロボットも停止できるようにすればいいだろ!』

と言う人もいるでしょうが、そういう<安全装置セーフティ>はすでに存在するんです。だけど、

『すべてのAIやロボットを一斉に停止させる』

なんてことをすればそれがどんな大惨事を招くか……

だから、<スイッチ一つでAIもロボットも停止できる安全装置セーフティ>は、あくまで特定の数台を緊急停止させるだけのものにしかできない上に、二十七世紀ごろにはすでに『AIやロボットは暴走しない』ことが常識になるレベルにまで至っていたことで、一般には忘れられた機能になってしまっていたんです。

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