獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

自身の憂さ晴らしのために

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私の考えは、ネット上などに発信すれば十中八九、猛烈な攻撃に曝されるものでしょう。

ですが私は、

<自身の憂さ晴らしのために他人の死を望む人>

の気持ちなど忖度しません。

しかし同時に、被害者や遺族が加害者の死を願わずにいられないこともについても否定する気は微塵もないので、犯罪被害者や遺族に対し自身の意見を直接ぶつけようとも思わないのです。

ましてや、事故や自殺という形で命を落とした方の遺族が、

『どんなに加害者の死を願ってもそれが叶えられることはない』

という事実について、面と向かって改めて突き付けるつもりもありません。

私はただ、

『自身の憂さ晴らしのために他人の死を望む』

ことが承服できないのです。ましてや、『自身の憂さ晴らしのために他人の死を望む』ことを<正義>にすり替えて自らを正当化するなどという行為が。

それは、テロリストが自らの行いを正当化しようとしているものと同じなのです。

しかも、そういう『自身の憂さ晴らしのために他人の死を望む』ような人達ほど、自身のそれを<正義>だと信じ込んでいたりもする。

だから、死刑制度に反対するかのような意見を述べるだけで猛然と攻撃してくる。

自身の<正義>に反するから。

人間というのは、本当に、

<一度<正義>を掲げるとそれ以外は目に入らなくなる傾向がある生き物>

ですね。

自分の信じる正義に反するものはすべて<悪>と捉え、死ぬまで追い詰めていいと考える。

被害者や遺族を盾にして。

実に近視眼的で独善的で危険な生き物です。

ですが、だからといってここで、

『そんな近視眼的で独善的で危険な生き物は排除するべきだ』

と考えるのも、<近視眼的で独善的で危険な考え方>なのです。

完全にテロリストの発想と同じ。

私は、自身の意見に反する意見を持つ相手についても、『排除するべき』とは考えません。その考え方はテロリストのそれなのですから。

これは<綺麗事>ではなく、社会というものを成立させるためには必要な<道理>なのです。

どちらか一方だけが正しいとお互いが考えていては、社会は機能しません。何も決められず、ただただ衝突を繰り返し、無為に時間を費やすだけ。それどころか、力によって相手を屈服させようとして傷付け、血を流す。

そうしてまた、被害者や遺族を出すのですか? 

『被害者や遺族の気持ちを考えろ!』

と言いながら、自分達がまた新たな被害者や遺族を生み出すのですか?

こう言うと、

『相手が引き下がればいいんだ! そうすれば被害者も遺族も生まれない!』

と、『双方が』言うのです。

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