獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

みんな仲良くしましょう

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メイミィの頭を撫でると、彼女はとても嬉しそうに表情をほころばせてくれました。

でもその時、こちらをじっと見詰める別の視線に私は気付きます。

「ラレアト……」

そう。ラレアトでした。彼女も、メイミィと同じく食事を届けに来たのです。彼女が属する集落の兎人とじん達のために。

同じ兎人とじんでも、メイミィとラレアトは、厳密には別の種族でした。ただ、どうやら二人は、私のことを慕ってくれているのですが、だからこそ対抗意識を燃やしている面が。

露骨に喧嘩まではしないものの、最近は特にそれが顕著になってきている気がします。

「コンニチハ」

基本的にリラックスしている時には、結構、流暢に言葉を話すメイミィですが、緊張している時や焦っている時には上手く話せないこともあり、この時もラレアトへの挨拶がぎこちない感じになっていました。

「コンニチハ」

対してラレアトは明るく人懐っこい性格で、元々とは高いコミュニケーション能力も持つものの、メイミィを前にすると少し雰囲気が変わります。

彼女への対抗意識がそうさせるのでしょうか。

私は、二人の関係が決定的に拗れるのは望みません。私にとっては二人とも、<可愛い妹>のような存在。できれば仲良くしてほしい。

ただ、だからと言って大上段に構えて、

『仲良くしなさい』

と押し付けるのも、逆に関係が拗れる原因になることが多いのも事実。学校などでよくあるものですね。教師が生徒に、

『みんな仲良くしましょう』

的に諭すんですが、言われた方の生徒は、仕方なく表面上は<仲良くしているフリ>をしていても、内心では……

みたいな話も多いです。私も実際に、プライマリー・スクール(小学校)の頃に、

『教師が『みんな仲良くしましょう』と言うので仲良くはしているものの、その実、裏では強固な<グループ>を作って対立し、時には<抗争>にまで至る』

という光景も何度も見ました。

正直、

『みんな仲良く』

というのは無理なんでしょう。人間が感情を発達させた生き物である以上は、どう頑張っても『合う・合わない』というのがあり、それを強引に仲良くさせようとしても逆にストレスが溜まるだけという……

しかも、表面的に仲良くしているように見えさえすれば教師は満足してしまう傾向もあって、この時点で評価されてしまい、その裏で行われている衝突からは目を背けてしまうことも多い。

これでは逆に問題の種を生むだけで、

<良好な関係>

を構築するには至らない。

この辺りも、注意しないといけませんね。

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