獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

知的生物として正しい姿

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やぐらについては、一週間を予定に完成させることを目標としています。

さすがにロボットも重機もないここで、全高七メートルの<ゴヘノヘ御輿>を製作するためのやぐらを組むというのは、それ自体が大変な作業だからです。

なのに、

「これは……すごいね……」

私と一緒に作業の全体を監督するために見守っていた少佐が思わず呟きました。

「はい…すごいですね……」

正直、私もそう返すしかありません。獣人達のパフォーマンスは、私達の当初の予測を遥かに上回り、ロボットを使った作業よりは僅かに及ばない程度の効率で進んだのですから。

地球人にはほぼ無理な、柱を一人で担いでそのまま立ててしまうという強力ごうりきを、見た目にも力強い猪人ししじんだけでなく、明らかに二回り以上は体のボリュームが小さい山羊人やぎじんでさえ見せるのです。

単純に体力という点であればすでに分かっていたことなのでそれほど驚くには値しないのですが、彼ら自身が<作業の意味>を理解し、私達が指示しなくてもしっかりと効率的に作業をこなしている点が素晴らしい。

彼ら獣人の知能そのものは、確かに十歳児くらいのそれなのでしょう。しかし彼らは、それを、直感と言うか感性と言うかで補い、自分が今、何をすべきか、自分がどう動けば目的を確実に達成できるかを、感覚的に理解しているようでした。

これはおそらく、まだまだ野生のそれに近い、<死>そのものがすぐ身近にある生き方をしていることで、自然と磨かれたものなのでしょう。

まったく。地球人は確かに便利な道具を無数に作り出し、高い知能でそれらを使いこなして惑星そのものさえ改造してしまうという大変な力を得たものの、<個々人の力>という意味では彼ら獣人には遠く及ばなくなってしまった気がします。いえ、間違いなくそうですね。

果たしてどちらが<知的生物として正しい姿>なのかも私には分かりませんが、彼らに対する畏敬の念は、素直に抱くことができてしまいます。

まあ、伍長が彼らと同じことができているのは、これは完全に<地球人としては例外的な存在>なのでさて置くとして。

獣人達は、確かに私達地球人に比べれば<原始人>のような暮らしをしているでしょう。しかし彼らは決して、私達より『劣っている』わけじゃない。彼らは、私達にはできないことをやって見せているのです。その意味では、間違いなく私達よりも『優れている』のもまぎれもない事実。

私はその事実と向き合い、獣人達をこの世界の住人として敬わなければと改めて思うのでした。

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