獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

私は<ビア樽>じゃありません!

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いずれにせよ、

『自分は切り捨てられる側になることはない』

などという考えは、

『自分は事故を起こすことはない』

という考えと同じく、まったく根拠のない<甘ったれの戯事>でしかありません。

私達軍人でさえ、時代が変われば切り捨てられることはありますし、事実、不要論が起こり縮小縮小と叫ばれた時期もありましたよね?

地球人が太陽系外にまで乗り出した時期には、それこそ、数億の人間が容赦なく切り捨てられたという、今では詳細な事実関係を探ることも容易ではなくなった話があります。

それが現実なのです。

だから、安易に、

『役に立たない人間は切り捨てればいい』

などと口にするべきではないんです。



ともあれ、<ホコの実>により落ち着きを取り戻したレミニィを連れて、メイミィは帰っていきました。本当は私と一緒にいたかったようで名残惜しそうにしていましたが、<仕事>を終えたレミニィを家に帰してあげなければいけませんからね。

それに、私とはいつでも会えます。焦る必要もない。

私も、彼女のことは精一杯受け止めています。それによってメイミィにも心の余裕が生まれています。だからこそ、レミニィのことを受け止めることもできる。

私達地球人にとっては普通のことですが、それが獣人達にも通じるのが本当にありがたいです。

二人を見送った後も、私は、兎人とじん達の作業を見守っていました。<よろずや>に戻って進捗状況を少佐に報告するためです。

その少佐自身も、それぞれの集落を回り、各リーダー達との折衝があります。こうして交流を深め、良い関係を築いて、様々な状況に迅速に対応する体制作りをしていきます。

これを怠っておきながら、

『どうして自分達の言う通りにしてくれない!?』

と憤るのは、愚者のすることです。

ただ、そのために、酒宴などにも付き合わなくてはいけなかったりするのが、少々辛いところですね。

少佐は、本当はその手の<飲ミニケーション>と呼ばれる類のものが好きではないですから。

だから、帰ってきた少佐を私が労わるのです。

なのに、時々、伍長が先に、

「お疲れさん。お前も大変だな」

などと、少佐を労うことがあるのが癪に障ります。

いつもは無駄に噛み付いたりするクセに……!

……でも、分かってはいるんです。伍長がただ戦いたいだけの<戦闘狂>だったり、体制や権力や上官に逆らいたいだけの人でないことは。彼は彼なりに、自身の信念に基づいて自分を律している。

自分より力や立場が弱い相手には、理不尽な攻撃をしない人だということも。

ですが、デリカシーというものに欠けてるのは、間違いありません!

「よう、ビア樽、今日も調子良さそうだな」

私が戻ったのを見掛けた途端にこれ。

「いい加減にしてください! 私は<ビア樽>じゃありません!」

このやり取りにも慣れてしまった自分が少し悲しいです。

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