獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

そんな者でも生きられる道があるのなら

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世の中には、自分以外の誰かが気遣われることについて酷く嫌悪感を覚える方がいるといいます。

『自分はこんなに大変な思いをしてても誰も気遣ってくれないのに、なんであいつが!!』

ということのようですね。

では、それについて何か声を上げたのですか? 誰かに相談したのですか? 救いを求めたのですか?

自分は声を上げることさえ怠っているのに、声を上げた方を妬むのは、それこそ筋違いというものですよ?

自分が上手くいかないのは、声を上げる勇気を持てない自分自身にこそ原因があるとは思いませんか?

とは言え、

『声を上げる勇気を持てない』

ということ自体が<事情>でもあるでしょうね。しかし、

『はっきりと目に見える事情さえ気遣えないような社会では、<目に見えない事情>はそれこそ気遣えない』

のも、道理というものではありませんか?

地球人類はそれに気付いたからこそ、何度もの危機を乗り越え今に至れたのだと思います。

が、その一方で、ここの獣人達が自らの社会を発展させていく中でどのような選択をするかは、彼ら自身の問題であり、<専権事項>というものでしょう。まったく別の社会に生きてきた別の種である私達が指図するべきものではないのかもしれません。

しかし、今の時点で、実際にメイミィや彼女の家族がレミニィを見捨てることなく、かつ、兎人とじん達がレミニィを排除しようとはしていないのですから、彼らが選択したいのは、

『家族や仲間を見捨てたくない』

というものであることも明白です。

傍目にはノーラを虐げ排除しようとしていたようにも見える山羊人やぎじん達でさえ、実はそれは山羊人やぎじん達全体の総意ではなかった。

相堂しょうどう伍長が見かねてノーラを保護したことについても、反対はしなかったのです。

『そんな者でも生きられる道があるのなら、任せてもいい』

それが彼らの判断でした。

そして私達が、<ノーラが生きていける術>を持っていた。

ゆえに彼らは、<よろずや>でノーラが保護されていることには何も干渉してこなかった。

それも事実です。

『<事情>をかかえているのが自分の身近なものであったら、家族であったら、それが可能であるなら、できれば見捨てたくはない』

そう考えてしまうのは、地球人も獣人達も同じだということです。

とは言え、獣人達にそういう発想があるのは、もしかすると彼らルーツそのものが<地球人>であるからかも知れませんが。

けれど彼らのルーツが何であれ、現に非情になりきれないのであれば、それでいいのではないですか? ここで、

『非情になれ!!』

と押し付けるのも、違うはずですしね。

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