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第二部
棟梁ルッセン
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『はあ…やれやれ……』
ニャルソは結局、兎人達の作業場までついてきました。
だけど、兎人達が怪訝そうな表情で自分を見ていることに気付くと、
「どうやら僕はお邪魔みたいだから、今日はこれで退散するよ」
そう言って去っていきました。
必ずしも険悪な関係ではないけど、兎人と山猫人も、かつては<狩られる側><狩る側>という立場だったことがあり、兎人達は山猫人をやや恐れているのです。
ニャルソも、その辺りはわきまえているようです。だから、兎人達とは積極的には関わろうとしませんし、彼らのテリトリーには無遠慮に踏み込んだりもしません。
こういう点からも、山猫人達がただ無節操なだけじゃないというのも分かります。
その辺りについても、山猫人達に対して悪いイメージだけを募らせるのも違うのでしょうね。
あくまで私達地球人とは感覚が違うというだけで。
それでも、理解するのは大変ですし、たぶん、完全に理解することもできないんでしょう。
<相互理解>とは、必ずしも相手を完全に理解することだけをいうわけではありません。
『理解できないことを理解する』
というのも大事なんです。
私も、山猫人の感覚を完全に理解することはできないと思います。ですが、だからといって彼らを排除すればいいというのも違うのです。それを望めば、互いに相手を排除し合うしかなくなる。
それでは何の解決にもなりません。
理解できないなら理解できないで、互いに適切な距離感を探り出し、住み分ける。
それが求められているのです。
そしてニャルソは、兎人達との間でそれをしっかりと体現している。
自分が望まれていないことを察し、それ以上は踏み込まない。
私に対してもできればそうしてほしいところですが、私が本当は<猫好き>で、生理的に嫌悪していたり、恐怖心を抱いている。というのではないことを見抜かれているのでしょうね。
この辺りについても、だからこそ釈然としないというのも正直言ってあります。
本気で嫌っているわけじゃないと悟られているのが悔しいと言いますか……
そんなこともありつつ、
「お食事をお持ちしました」
私は、兎人達に笑顔で話し掛けます。
「アリガトウ、ビアンカ」
兎人達の<棟梁>ルッセンが応えてくれます。
こちらも、鼠人の棟梁であるティクラに通じる雰囲気を持った、どこか逞しさを感じさせる兎人でした。
ただし、ティクラが<雄>なのに対し、ルッセンは<雌>ですが。
ニャルソは結局、兎人達の作業場までついてきました。
だけど、兎人達が怪訝そうな表情で自分を見ていることに気付くと、
「どうやら僕はお邪魔みたいだから、今日はこれで退散するよ」
そう言って去っていきました。
必ずしも険悪な関係ではないけど、兎人と山猫人も、かつては<狩られる側><狩る側>という立場だったことがあり、兎人達は山猫人をやや恐れているのです。
ニャルソも、その辺りはわきまえているようです。だから、兎人達とは積極的には関わろうとしませんし、彼らのテリトリーには無遠慮に踏み込んだりもしません。
こういう点からも、山猫人達がただ無節操なだけじゃないというのも分かります。
その辺りについても、山猫人達に対して悪いイメージだけを募らせるのも違うのでしょうね。
あくまで私達地球人とは感覚が違うというだけで。
それでも、理解するのは大変ですし、たぶん、完全に理解することもできないんでしょう。
<相互理解>とは、必ずしも相手を完全に理解することだけをいうわけではありません。
『理解できないことを理解する』
というのも大事なんです。
私も、山猫人の感覚を完全に理解することはできないと思います。ですが、だからといって彼らを排除すればいいというのも違うのです。それを望めば、互いに相手を排除し合うしかなくなる。
それでは何の解決にもなりません。
理解できないなら理解できないで、互いに適切な距離感を探り出し、住み分ける。
それが求められているのです。
そしてニャルソは、兎人達との間でそれをしっかりと体現している。
自分が望まれていないことを察し、それ以上は踏み込まない。
私に対してもできればそうしてほしいところですが、私が本当は<猫好き>で、生理的に嫌悪していたり、恐怖心を抱いている。というのではないことを見抜かれているのでしょうね。
この辺りについても、だからこそ釈然としないというのも正直言ってあります。
本気で嫌っているわけじゃないと悟られているのが悔しいと言いますか……
そんなこともありつつ、
「お食事をお持ちしました」
私は、兎人達に笑顔で話し掛けます。
「アリガトウ、ビアンカ」
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こちらも、鼠人の棟梁であるティクラに通じる雰囲気を持った、どこか逞しさを感じさせる兎人でした。
ただし、ティクラが<雄>なのに対し、ルッセンは<雌>ですが。
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