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第二部
奴隷という概念
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「おはようございます」
材料の切り出しと加工を行っている現場に食事を届けるために訪れた私は、それと同時に作業の進捗状況も確認しました。
見ると、想定よりもかなり多いのが確認できます。
そこで私は、棟梁のティクラに確認しました。
「仕事始めはあちらの山から日が覗いてから。仕事終わりはあちらの山に日が掛かるまで。そしてその間、三回、休憩を取る。守っていただけてますか?」
東と西の山をそれぞれ指差し、問い掛けます。
するとティクラは、
「オンジン、ノ、コトバ、マモル!」
胸をドンと叩きながら答えました。そんな彼に続いて、私の言葉が聞こえていた鼠人達も、
「マモル!」
「マモル!」
一斉に声を上げます。ティクラのパートナーで技術指導役のリトリトも、
「モチロン、マモラセテル!」
とのことでした。
「そうですか。それならいいんです。ではこれは、皆さんの能力の高さを表してるんですね」
笑顔で私も応えます。彼らの言葉が本当であれば、私達が彼らの能力を過小評価していたということでしょう。
一応、このことは少佐に報告するものの、だからと言って作業のペースを見直すことはないでしょう。あくまで、余裕があるこの状態を維持したいですから。
私達は、彼らに過重労働を強いるつもりはまったくありません。この世界に<奴隷制度>を再現するつもりはないんです。
地球でも、生産性が低かった時代、奴隷に過重労働を強いることでバランスを取っていたことがありました。
十分なリソースがなかったのですから、その中でより多くの人を生かすには止むを得なかったという背景はあるでしょう。しかし<奴隷>という概念は、それが禁止されてからも形を変えつつ、二十五世紀頃まで根強く残ってしまったのです。リソースそのものは十分に足りているにも拘らず、一部の人間が過剰に贅沢な暮らしをするために。
私達地球人は、それを、ロボットを進歩させることでようやく解消に至りました。<社畜>などの言葉に代表される過重労働を担えるだけの性能を実現したのです。
残念ながらここにはロボットは存在しませんが、代わりに、徹底した生産管理によって、可能な限り奴隷の誕生の回避を目指したい。
<奴隷という概念>の誕生を極力回避したいのです。
獣人達自身が自らその概念を生み出してしまうことまでは避けられないとしても、少なくとも私達が生きている間は奴隷という存在を禁忌とすることで。
生産の効率化を図ることで十分なリソースを確保しつつ、同時に、無理な生産を強いない。
その理念がどこまで維持できるかはまったく予測もつきませんが、努力もせずに諦めるのは<怠惰>というものでしょう。
材料の切り出しと加工を行っている現場に食事を届けるために訪れた私は、それと同時に作業の進捗状況も確認しました。
見ると、想定よりもかなり多いのが確認できます。
そこで私は、棟梁のティクラに確認しました。
「仕事始めはあちらの山から日が覗いてから。仕事終わりはあちらの山に日が掛かるまで。そしてその間、三回、休憩を取る。守っていただけてますか?」
東と西の山をそれぞれ指差し、問い掛けます。
するとティクラは、
「オンジン、ノ、コトバ、マモル!」
胸をドンと叩きながら答えました。そんな彼に続いて、私の言葉が聞こえていた鼠人達も、
「マモル!」
「マモル!」
一斉に声を上げます。ティクラのパートナーで技術指導役のリトリトも、
「モチロン、マモラセテル!」
とのことでした。
「そうですか。それならいいんです。ではこれは、皆さんの能力の高さを表してるんですね」
笑顔で私も応えます。彼らの言葉が本当であれば、私達が彼らの能力を過小評価していたということでしょう。
一応、このことは少佐に報告するものの、だからと言って作業のペースを見直すことはないでしょう。あくまで、余裕があるこの状態を維持したいですから。
私達は、彼らに過重労働を強いるつもりはまったくありません。この世界に<奴隷制度>を再現するつもりはないんです。
地球でも、生産性が低かった時代、奴隷に過重労働を強いることでバランスを取っていたことがありました。
十分なリソースがなかったのですから、その中でより多くの人を生かすには止むを得なかったという背景はあるでしょう。しかし<奴隷>という概念は、それが禁止されてからも形を変えつつ、二十五世紀頃まで根強く残ってしまったのです。リソースそのものは十分に足りているにも拘らず、一部の人間が過剰に贅沢な暮らしをするために。
私達地球人は、それを、ロボットを進歩させることでようやく解消に至りました。<社畜>などの言葉に代表される過重労働を担えるだけの性能を実現したのです。
残念ながらここにはロボットは存在しませんが、代わりに、徹底した生産管理によって、可能な限り奴隷の誕生の回避を目指したい。
<奴隷という概念>の誕生を極力回避したいのです。
獣人達自身が自らその概念を生み出してしまうことまでは避けられないとしても、少なくとも私達が生きている間は奴隷という存在を禁忌とすることで。
生産の効率化を図ることで十分なリソースを確保しつつ、同時に、無理な生産を強いない。
その理念がどこまで維持できるかはまったく予測もつきませんが、努力もせずに諦めるのは<怠惰>というものでしょう。
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