獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

棟梁ティクラ

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「イクゾ~!」

「オオ~ッ!!」

今日も鼠人そじん達は、掛け声と共に<仕事>に取り掛かります。<対ゴヘノヘ用決戦兵器の演習用の的>となる<ゴヘノヘ御輿>の建造に向けての、まずは材料の切り出しですね。

鼠人そじん達の音頭を取るのは、<棟梁>のティクラ。身長こそ私の膝上くらいまでしかありませんが、鼠人そじんの中ではそれでも大柄な方で、しかもがっちりとした体躯を持つ、力自慢なのだそうです。

先の<ゴヘノヘ戦>に向けての準備においても彼が仲間を束ねて指揮した実績を基に、<棟梁>として少佐が指名したことで、今の体制が出来上がりました。

そして、彼の<右腕>として、一緒に鼠人そじん達を指揮するのは、彼のパートナーであるリトリト。雌ではありながら木を伐採したり加工する技術についてはティクラさえ上回るとのこと。

ティクラが全体を指揮し、リトリトが細かい指示と技術指導を行う形がすっかり定着しています。

私は、<よろずや>として彼らにデリバリーを届けるためにきました。

「皆さん、頑張ってますね」

私が、食事を入れたバスケットを地面に下しながら声を掛けると、

「オウヨ!」

ティクラが威勢よく応えます。そして自身もバリバリと木を齧り切り倒すと、

「ビアンカタチ、オレタチニ、ヤクメ、クレタ。ジシン、クレタ。オレタチ、ヤクメ、ハタス」

胸を張って言いました。すると、小さなはずのその姿が、とても大きく見えたのです。

自信と誇りは、人を大きく見せるのだと、改めて感じました。梟人きょうじん山猫人ねこじんに怯えて陰に隠れるように生きていた彼らがとても生き生きしているように感じます。

もちろん、以前も彼らは彼らで懸命に生き、人生を謳歌していたのだとは思いますが、あくまで『私の目から見た印象として』の話ですね。

リトリトも、

「キ、ノ、スジヲ、カンガエテ、カジレ。ソウスレバ、ウマク、タオセル」

堂に入った指導を行っていて、たいしたものです。

彼らの働きにより、見る見る材料の木材が準備されていきます。

ただ、無計画に伐採すると森が壊れてしまいますので、<道路の整備>としてこれまでの<獣道>同然の道を拡張すのに合わせて伐採します。

なお、<道路>は、単に広くて通行しやすいだけのものでは、逆にゴヘノヘにとっても移動しやすいものになってしまいますので、不規則に<短い杭>が並んだ道路にすることが決まっています。

獣人達が徒歩で通ったり、これから量産を始める<荷車>については通行を妨げないように、荷車の<最低地上高>を考慮に入れた長さで揃えるというのも。

そして、不規則に見えながらも実際には、決まった位置を通れば真っ直ぐに進めるようにもなっているんです。

あくまで、

<ゴヘノヘにとっては通り難い道>

にするというだけで。

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