獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
117 / 404
第二部

ゴヘノヘ祭り(仮)

しおりを挟む
そんなこんなで、<ゴヘノヘ祭り(仮)>の開催が決定したんですが、当然、その準備は容易ではありませんでした。

ただ、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>の演習用の<的>の製作については早々に取り掛かることに。

ゴヘノヘを撃退するためにした様々な準備で大活躍だった鼠人そじん達が特に乗り気で。

なにしろ、ゴヘノヘに対する攻撃手段として用意された<杭>や<槍>は全て彼らの手によるもので、それがゴヘノヘの撃退に最も貢献したわけですから、彼らにとってはそれこそ<誇り>そのものでしょう。

鼠人そじんは、どうしても体が小さく、獣人達がそれこそただの<獣>と変わりなかった頃には、猪人ししじん梟人きょうじん山猫人ねこじんらにとっては捕食対象だった過去もあるのです。

獣人達に文明の兆しのようなものが見え始めてからは、原始的な<言語>も生まれ、それで獣人同士のコミュニケーションが複雑化。これに伴い、

『意思の疎通ができる相手を食うのはちょっと……』

という意識が芽生え、

鼠人そじんを獲物として襲う行為>

は廃れていったそうです。

とはいえ、

<無意識のレベルまで刻み込まれた捕食者への恐怖>

はそう簡単に拭い去れるものでもなく、特に、梟人きょうじん山猫人ねこじんらはつい数世代前まで彼らを捕食していたそうなので、鼠人そじんらは自分達の非力さそのものを恐れ、他の獣人らの目から隠れて生きるような暮らしをしてきたとのこと。

なのに、先のゴヘノヘ襲来の際には彼らの作った<武器>こそが<勝利の鍵>となったとも言え、それが彼らに自信と誇りをもたらし、

<物作りへの関心>

を励起したようですね。

<対ゴヘノヘ用決戦兵器>についても、部品の大半は鼠人そじんらの手によるものなのですから。

そして、鼠人そじんらに次いで先のゴヘノヘ戦で大きな働きをしたのは兎人とじんです。彼らの<穴掘り>の能力がなければゴヘノヘに対して有効な落とし穴は用意できなかったでしょう。

兎人とじんは、鼠人そじんに比べれば体も大きく、見た目の印象とは裏腹に力も強くて特に足の力は山猫人ねこじんを上回り、それを活かした強烈な<蹴り>は、まともに食らえば骨は容易く砕け内臓が破裂するレベルのものでした。

なので、鼠人そじんほどは狙われはしなかったものの、やはり猪人ししじん山猫人ねこじんらのことは苦手としていたのも事実です。

加えて、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>製造の際には、足場を組むための基礎となる柱をしっかり立てる用の穴掘りや、鼠人そじんほどではないものの木の伐採や加工でも力を発揮したこともあり、非常にやる気になっていたのでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった

ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」  15歳の春。  念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。 「隊長とか面倒くさいんですけど」  S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは…… 「部下は美女揃いだぞ?」 「やらせていただきます!」  こうして俺は仕方なく隊長となった。  渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。  女騎士二人は17歳。  もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。   「あの……みんな年上なんですが」 「だが美人揃いだぞ?」 「がんばります!」  とは言ったものの。  俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?  と思っていた翌日の朝。  実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた! ★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。 ※2023年11月25日に書籍が発売!  イラストレーターはiltusa先生です! ※コミカライズも進行中!

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...