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総員撤退!!
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スクリームを浴びつつゴヘノヘの顎に向けて杭を突き上げた伍長ですが、さすがにダメージはあったのでしょう。その場で膝を着きます。
一方、ゴヘノヘの方は、顎に杭が刺さったことで、
「ガアアアアアアアアーッッ!!」
悲鳴のような咆哮を上げながら頭をのけぞらせ、そのすぐ後で杭を自分の手で掴んで引き抜きました。
その間に、ブオゴが、伍長を担いで離脱します。
そうやってブオゴに助けられたのが不満だったのでしょう。伍長は苦い顔。それでも、
「すまん……」
と謝意を伝えたのは、口の動きで分かりましたね。
こういうところは彼もわきまえてくれています。
しかし、犠牲者こそここまで出ていないものの、こちらとしても疲弊してきているのは事実。足が止まれば犠牲者が出るのは間違いありません。
ですが、ゴヘノヘの方もダメージが蓄積しているのも見えます。
だから少佐は決断しました。
「撤退! 総員撤退!!」
猪人達は引かないとしても、梟人達と山猫人達にはこれ以上、無理をさせられません。
「デモ……!」
梟人の一人が少佐に言いますが、
「駄目だ! 命令だ! 撤退しろ!! 私は君らを無事に帰すと約束した!!」
少佐はきっぱりと命じます。
まだ動けるうちでなければ、撤退もままならなくなります。少佐の決断は、揺らぎません。
「……!」
梟人達も山猫人達も、悔しそうに顔を歪めながら、でも命令に従って撤退を始めました。ここで無理をして命令を無視して立ち向かっていけばきっと盛り上がるのでしょうが、それでは駄目なのです。
するとゴヘノヘが、逃げる梟人達と山猫人達に視線を向けるのが分かりました。
逃げる獲物を追う習性があることがそれで察せられます。
「ユキ! 我々も撤退だ!!」
少佐が伍長に命令し、同時に私に目配せをしてきます。
その意図を私も察し、伍長も、黙ったまま走り出しました。
私達の足る速度は、本気の梟人達や山猫人達には遠く及びません。
ゴヘノヘからは逃げ切れるものではないのです。
しかし私達を追って走り出したゴヘノヘの速度も、明らかに落ちている。
ここまでのダメージの影響でしょう。それでも、私達よりは早いですが。
ブオゴ達猪人の戦士は、私達を追うゴヘノヘをさらに追いました。
速度の落ちたゴヘノヘであれば、猪人達の脚が勝ります。
杭を持ったブオゴが、ゴヘノヘの太股目掛けてそれを突き立てました。
「ゴォアアアアアアーッッ!!」
声を上げたゴヘノヘが、つんのめります。
そして前足を地面に着けた時、その地面がゴゾリ!と崩れ落ちたのでした。
一方、ゴヘノヘの方は、顎に杭が刺さったことで、
「ガアアアアアアアアーッッ!!」
悲鳴のような咆哮を上げながら頭をのけぞらせ、そのすぐ後で杭を自分の手で掴んで引き抜きました。
その間に、ブオゴが、伍長を担いで離脱します。
そうやってブオゴに助けられたのが不満だったのでしょう。伍長は苦い顔。それでも、
「すまん……」
と謝意を伝えたのは、口の動きで分かりましたね。
こういうところは彼もわきまえてくれています。
しかし、犠牲者こそここまで出ていないものの、こちらとしても疲弊してきているのは事実。足が止まれば犠牲者が出るのは間違いありません。
ですが、ゴヘノヘの方もダメージが蓄積しているのも見えます。
だから少佐は決断しました。
「撤退! 総員撤退!!」
猪人達は引かないとしても、梟人達と山猫人達にはこれ以上、無理をさせられません。
「デモ……!」
梟人の一人が少佐に言いますが、
「駄目だ! 命令だ! 撤退しろ!! 私は君らを無事に帰すと約束した!!」
少佐はきっぱりと命じます。
まだ動けるうちでなければ、撤退もままならなくなります。少佐の決断は、揺らぎません。
「……!」
梟人達も山猫人達も、悔しそうに顔を歪めながら、でも命令に従って撤退を始めました。ここで無理をして命令を無視して立ち向かっていけばきっと盛り上がるのでしょうが、それでは駄目なのです。
するとゴヘノヘが、逃げる梟人達と山猫人達に視線を向けるのが分かりました。
逃げる獲物を追う習性があることがそれで察せられます。
「ユキ! 我々も撤退だ!!」
少佐が伍長に命令し、同時に私に目配せをしてきます。
その意図を私も察し、伍長も、黙ったまま走り出しました。
私達の足る速度は、本気の梟人達や山猫人達には遠く及びません。
ゴヘノヘからは逃げ切れるものではないのです。
しかし私達を追って走り出したゴヘノヘの速度も、明らかに落ちている。
ここまでのダメージの影響でしょう。それでも、私達よりは早いですが。
ブオゴ達猪人の戦士は、私達を追うゴヘノヘをさらに追いました。
速度の落ちたゴヘノヘであれば、猪人達の脚が勝ります。
杭を持ったブオゴが、ゴヘノヘの太股目掛けてそれを突き立てました。
「ゴォアアアアアアーッッ!!」
声を上げたゴヘノヘが、つんのめります。
そして前足を地面に着けた時、その地面がゴゾリ!と崩れ落ちたのでした。
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