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スクリーム
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<スクリーム>
それは、現在でも一部の軍や警察機構で使用される<音響兵器>の名称です。他にも<LRAD(Long Range Acoustic Device)>と呼ばれたりもしますが、対象に向けて志向性の高い音波を発し、不安感や不快感を生じさせたり、時には平衡感覚を奪ったり、場合によっては失神させたりもするというものです。
それを、梟人達の<声>によって再現を試みたのです。
ただ、さすがに生物の発声ではそこまで志向性を持たせるのは困難なので、何人もの梟人により多方向から同時に一点に向けて発声することで局所的に破壊的な威力を発生させることを目指しました。
実を言うと、伍長が自ら被検体になることを提案し、実験も行っています。それによると、七人の梟人が完璧な同調を見せると、眩暈を発生させることができるのが確認されました。
ただしこれを行うには、七人以上、しかも今回の相手はゴヘノヘなので、それも鑑みて十人以上の梟人が足を止めて確実にゴヘノヘの頭部を狙って放つ必要があり、危険を伴うことから大きな決断を要する攻撃手段だったのです。
ですが、今まさに、その決断をする必要があると、少佐は判断したのでした。
「ロロロロロロロロロローッッ!!」
十人の梟人が同時に放ったそれは、ゴヘノヘの頭を捉えました。
一瞬、ゴヘノヘの動きが止まります。効果があったのです。
そして動きを止めたゴヘノヘの腰に、伍長の放った<杭>が深々と刺さります。
「ゴオアアアアアアアーッ!!」
さすがにその痛みが勝ったのかゴヘノヘが正気を取り戻し、
「退避! 退避っっ!!」
少佐が命じて、梟人達を退避させます。
それと入れ替わるようにして現れた、ブオゴをはじめとした猪人の戦士達。
しかし彼らは、伍長と違って手を出しませんでした。
ここは彼らにとっての戦場じゃないからでしょう。
だからそれを批判するつもりはありません。
今回の作戦を提案したのは私達であり、彼らは自分達の戦い方を守ることを条件に協力してくれたのですから。
なのに……
杭が腰に刺さったことでやや足を引きずるような動きになったゴヘノヘに、梟人や山猫人達による攪乱という形で援護を受けつつも私達が三人だけで戦っていることに何かを感じたのか、それともすでに<罠>についてはほぼ機能していないことを悟ったのか……
「オオオオオオオオッッ!!」
伍長と同じく、地面に落ちていた<杭>を拾い、ブオゴがゴヘノヘ目掛けて走ったのでした。
それは、現在でも一部の軍や警察機構で使用される<音響兵器>の名称です。他にも<LRAD(Long Range Acoustic Device)>と呼ばれたりもしますが、対象に向けて志向性の高い音波を発し、不安感や不快感を生じさせたり、時には平衡感覚を奪ったり、場合によっては失神させたりもするというものです。
それを、梟人達の<声>によって再現を試みたのです。
ただ、さすがに生物の発声ではそこまで志向性を持たせるのは困難なので、何人もの梟人により多方向から同時に一点に向けて発声することで局所的に破壊的な威力を発生させることを目指しました。
実を言うと、伍長が自ら被検体になることを提案し、実験も行っています。それによると、七人の梟人が完璧な同調を見せると、眩暈を発生させることができるのが確認されました。
ただしこれを行うには、七人以上、しかも今回の相手はゴヘノヘなので、それも鑑みて十人以上の梟人が足を止めて確実にゴヘノヘの頭部を狙って放つ必要があり、危険を伴うことから大きな決断を要する攻撃手段だったのです。
ですが、今まさに、その決断をする必要があると、少佐は判断したのでした。
「ロロロロロロロロロローッッ!!」
十人の梟人が同時に放ったそれは、ゴヘノヘの頭を捉えました。
一瞬、ゴヘノヘの動きが止まります。効果があったのです。
そして動きを止めたゴヘノヘの腰に、伍長の放った<杭>が深々と刺さります。
「ゴオアアアアアアアーッ!!」
さすがにその痛みが勝ったのかゴヘノヘが正気を取り戻し、
「退避! 退避っっ!!」
少佐が命じて、梟人達を退避させます。
それと入れ替わるようにして現れた、ブオゴをはじめとした猪人の戦士達。
しかし彼らは、伍長と違って手を出しませんでした。
ここは彼らにとっての戦場じゃないからでしょう。
だからそれを批判するつもりはありません。
今回の作戦を提案したのは私達であり、彼らは自分達の戦い方を守ることを条件に協力してくれたのですから。
なのに……
杭が腰に刺さったことでやや足を引きずるような動きになったゴヘノヘに、梟人や山猫人達による攪乱という形で援護を受けつつも私達が三人だけで戦っていることに何かを感じたのか、それともすでに<罠>についてはほぼ機能していないことを悟ったのか……
「オオオオオオオオッッ!!」
伍長と同じく、地面に落ちていた<杭>を拾い、ブオゴがゴヘノヘ目掛けて走ったのでした。
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