69 / 404
完成された生活
しおりを挟む
尾篭な話はこれくらいにして、とにかくいろいろな面で私達の生活はもうすでにある意味では完成されたものになっているということですね。
この世界に合わせて。
そして……
「おお~! 立ったぁ♡」
ノーラの赤ん坊が、生後七日目で、支えなしで立つことができました。この辺りは個人差が大きいので、特に早いわけではないですが遅くもないでしょう。
「ふーっ! ふっふっ!」
鼻息荒く自慢げに私達を見ます。特に、相堂伍長に意識を向けてる気がするのは、思い過ごしでしょうか?
いえ、ハイハイを始めてからは特に寝ている伍長にちょっかいを掛けていたので、もしかすると彼のことを<父親>だと思ってる可能性がある…?
正直、それも否定はできないかもしれません。
いずれ山羊人のコミュニティに戻っていくことになるはずなので、女性である私はともかく男性の少佐と伍長は<父親>だと思われないようにそんなに丁寧には構わないようにしてきたはずなんですが。
ただ、赤ん坊の方からこられると邪険にするわけにもいかず、伍長は決して愛想よくはしなかったものの相手をしてあげてたんですよね。
それでも赤ん坊にとっては父親、いえ、母親は別にして<一番の仲間>だと思っているのかも。
「これは……別れが少し辛くなるかもしれないね」
「そうですね……泣かれるかも……」
立ち上がったのはほんの数秒だけで、すぐに尻餅をつき、それからハイハイで伍長のところに向かう赤ん坊を見て、少佐と私は言葉を交わしました。
「……」
伍長は黙って、自分の脚に縋り付いて掴まり立ちをしつつ、
「あ~、あ~」
と何かを話し掛けようとする赤ん坊を見詰めます。
その表情は、笑顔とかではないもののどこか優しい感じで……
私や少佐にはあまり見せない彼の一面を改めて見た思いですね。
それからも私達の生活は、獣蟲の襲撃などもありつつも、想定外のトラブルはなかったという意味では平穏でした。
しかも、クレアも、元の<不定形で透明な謎の存在>に戻ってしまうこともなく普通に暮らし、さらにはメキメキと知識を身に付けていって、
「ビアーカ! クリュー! ユキ!」
私達の名前も、若干、不正確ではありながらも覚えてくれて、ある程度はしゃべれるようになりました。
この調子だと、少なくとも獣人達と変わらない程度には様々なことを理解してくれるかもしれません。
そしてそれは、獣人達の起源についての大きなヒントでもあるでしょう。
彼らはやはり、このクレアのようにあの<不定形で透明な謎の存在>が落雷などの強い刺激を受けたことにより姿を変えた者達が祖先になっているという可能性を示してくれたのです。
この世界に合わせて。
そして……
「おお~! 立ったぁ♡」
ノーラの赤ん坊が、生後七日目で、支えなしで立つことができました。この辺りは個人差が大きいので、特に早いわけではないですが遅くもないでしょう。
「ふーっ! ふっふっ!」
鼻息荒く自慢げに私達を見ます。特に、相堂伍長に意識を向けてる気がするのは、思い過ごしでしょうか?
いえ、ハイハイを始めてからは特に寝ている伍長にちょっかいを掛けていたので、もしかすると彼のことを<父親>だと思ってる可能性がある…?
正直、それも否定はできないかもしれません。
いずれ山羊人のコミュニティに戻っていくことになるはずなので、女性である私はともかく男性の少佐と伍長は<父親>だと思われないようにそんなに丁寧には構わないようにしてきたはずなんですが。
ただ、赤ん坊の方からこられると邪険にするわけにもいかず、伍長は決して愛想よくはしなかったものの相手をしてあげてたんですよね。
それでも赤ん坊にとっては父親、いえ、母親は別にして<一番の仲間>だと思っているのかも。
「これは……別れが少し辛くなるかもしれないね」
「そうですね……泣かれるかも……」
立ち上がったのはほんの数秒だけで、すぐに尻餅をつき、それからハイハイで伍長のところに向かう赤ん坊を見て、少佐と私は言葉を交わしました。
「……」
伍長は黙って、自分の脚に縋り付いて掴まり立ちをしつつ、
「あ~、あ~」
と何かを話し掛けようとする赤ん坊を見詰めます。
その表情は、笑顔とかではないもののどこか優しい感じで……
私や少佐にはあまり見せない彼の一面を改めて見た思いですね。
それからも私達の生活は、獣蟲の襲撃などもありつつも、想定外のトラブルはなかったという意味では平穏でした。
しかも、クレアも、元の<不定形で透明な謎の存在>に戻ってしまうこともなく普通に暮らし、さらにはメキメキと知識を身に付けていって、
「ビアーカ! クリュー! ユキ!」
私達の名前も、若干、不正確ではありながらも覚えてくれて、ある程度はしゃべれるようになりました。
この調子だと、少なくとも獣人達と変わらない程度には様々なことを理解してくれるかもしれません。
そしてそれは、獣人達の起源についての大きなヒントでもあるでしょう。
彼らはやはり、このクレアのようにあの<不定形で透明な謎の存在>が落雷などの強い刺激を受けたことにより姿を変えた者達が祖先になっているという可能性を示してくれたのです。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説


異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる