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生きている実感
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ただし、明確な弱点があるといっても油断ならない相手であることもまた事実。私達でさえ、不意を突かれると危険です。
メイミィが襲われていることに少佐と伍長が気付いて対処してくれたのでしょう。
私はメイミィを連れて<よろずや>に戻りました。
他の獣蟲の気配もありませんし、ここまでくれば安心です。
「メイミィ、怪我はない?」
腰が抜けたように座り込んだ彼女の体を私も確認しながら改めて問い掛けます。
「ダイジョウブ……」
彼女がそう言うように、確かに目立った傷はないようです。
けれどそこに、
「あ~っ! うあ~っ!!」
ノーラの声。
「ごめんね、ちょっと待っててね」
メイミィにそう声を掛けてからノーラの部屋に行くと、彼女の赤ちゃんが仰向けのまま足で床をぐいぐいと蹴ってずりずりと<背面ずり這い>で部屋の中を移動しているのが見えました。
獣人達の赤ん坊は、完全な獣に比べれば明らかに遅いものの、私達地球人と比べると格段に成長が早く、生まれてから数日で立ち上がる場合もあります。
ノーラはそうやって部屋の床を這い回る我が子の姿に怯えているようですね。彼女にとっては何やら不気味な生き物に見えたのでしょう。
とはいえ、当の赤ん坊の方はそんな自分の母親のことなどお構いなしで猛然と這い回ります。
これ自体は、子供が健康に育っている何よりの証拠なのでむしろ微笑ましい光景ですね。なので赤ん坊の方は敢えて好きにさせておいて、
「大丈夫だよ、怖くないよ」
ノーラをそっと抱き締めて穏やかに声を掛けます。
こうしてノーラの方を安心させないと、自分の赤ん坊を危険な何かと誤認して攻撃を仕掛けてしまう可能性すらありますから。
彼女は私に抱きついて、
「ふい~…!」
と泣きました。とても不安だったのでしょうね。山羊人の柔らかい毛が私の頬をくすぐります。
しばらくそうしていると彼女の体から緊張が抜け、安心していくのが分かりました。
その間も、赤ん坊はすごい勢いで突き進んで、とうとう壁に頭をぶつけて止まります。
でも、さらに進もうと床を蹴り、なのに進めないことで、
「うう~っ!」
と声を上げました。明らかに怒っています。その様子がなんだかとても可笑しくて、
「ふふ…っ♡」
私は思わず笑顔になってしまいました。
獣蟲のこと、メイミィのこと、ノーラのこと、さらにノーラの赤ん坊のこと。
まったく、次々といろんなことが起こって忙しくて仕方ありません。
けれどそれがむしろ楽しい。
私はここで確かに生きているんだという実感があって、なんだか嬉しくなってしまったのでした。
メイミィが襲われていることに少佐と伍長が気付いて対処してくれたのでしょう。
私はメイミィを連れて<よろずや>に戻りました。
他の獣蟲の気配もありませんし、ここまでくれば安心です。
「メイミィ、怪我はない?」
腰が抜けたように座り込んだ彼女の体を私も確認しながら改めて問い掛けます。
「ダイジョウブ……」
彼女がそう言うように、確かに目立った傷はないようです。
けれどそこに、
「あ~っ! うあ~っ!!」
ノーラの声。
「ごめんね、ちょっと待っててね」
メイミィにそう声を掛けてからノーラの部屋に行くと、彼女の赤ちゃんが仰向けのまま足で床をぐいぐいと蹴ってずりずりと<背面ずり這い>で部屋の中を移動しているのが見えました。
獣人達の赤ん坊は、完全な獣に比べれば明らかに遅いものの、私達地球人と比べると格段に成長が早く、生まれてから数日で立ち上がる場合もあります。
ノーラはそうやって部屋の床を這い回る我が子の姿に怯えているようですね。彼女にとっては何やら不気味な生き物に見えたのでしょう。
とはいえ、当の赤ん坊の方はそんな自分の母親のことなどお構いなしで猛然と這い回ります。
これ自体は、子供が健康に育っている何よりの証拠なのでむしろ微笑ましい光景ですね。なので赤ん坊の方は敢えて好きにさせておいて、
「大丈夫だよ、怖くないよ」
ノーラをそっと抱き締めて穏やかに声を掛けます。
こうしてノーラの方を安心させないと、自分の赤ん坊を危険な何かと誤認して攻撃を仕掛けてしまう可能性すらありますから。
彼女は私に抱きついて、
「ふい~…!」
と泣きました。とても不安だったのでしょうね。山羊人の柔らかい毛が私の頬をくすぐります。
しばらくそうしていると彼女の体から緊張が抜け、安心していくのが分かりました。
その間も、赤ん坊はすごい勢いで突き進んで、とうとう壁に頭をぶつけて止まります。
でも、さらに進もうと床を蹴り、なのに進めないことで、
「うう~っ!」
と声を上げました。明らかに怒っています。その様子がなんだかとても可笑しくて、
「ふふ…っ♡」
私は思わず笑顔になってしまいました。
獣蟲のこと、メイミィのこと、ノーラのこと、さらにノーラの赤ん坊のこと。
まったく、次々といろんなことが起こって忙しくて仕方ありません。
けれどそれがむしろ楽しい。
私はここで確かに生きているんだという実感があって、なんだか嬉しくなってしまったのでした。
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