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トイラ
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「でぇあっ!!」
「ゴアアッ!!
伍長とブオゴは互いに一歩も引くことなくぶつかり合い、僅かに間合いを取ったかと思うと、二人して森の中に駆け込んでいってしまいました。
戦いの場を移すということなのでしょう。
まあ、どちらかが命を落とすようなことがあっても、彼らとしては互いに承知の上なので、別に構わないのでしょうし。
「ブオゴ、センシ。ホコリタカイ。タタカッテシヌ、センシ、ノ、メイヨ」
と言ってましたからね。
実際、猪人達にとっては戦って命を落とすことこそが名誉なのだそうです。病気とか事故とかで死ぬのは不名誉なのだとか。
そして、寿命で死ぬことも。
地球人類の世界ではすでに否定されているそういう考え方も、ここでは生きているんです。
けれど私達は、自分達を優れた者として、彼らを卑しい未開の蛮族として見下し、地球人類の価値観を押し付けることは避けるようにしています。
ノーラの件にしても、山羊人達の中にもノーラを見捨てられないトームを見捨てられないという考えがあればこそ力になっただけですし。
その点、猪人には、
『戦って死ぬことこそが誇り』
という考えを疑う空気さえありません。今のところは。となれば口出しもできません。
で、伍長とブオゴがいなくなったところに、
「コン~♡」
聞き覚えのある声、
ラレアトでした。
「いらっしゃいませ~♡」
可愛らしいお客に、私も笑顔になります。でも、今日の分のナヌヘは食べてしまったのに、どうしたのでしょうか?
するとラレアトは、
「トイラ、アゲル…♡」
そう言って彼女は植物の束を差し出しました。
<トイラ>と呼ばれる、地球の<フキ>に似た植物でした。独特の苦味があってラレアト達はあまり食べないのですが、逆に私達にはちょうど良い食材の一つでした。私達には消化できない成分もほとんど含まれない。
たぶん、ナヌヘのお礼として採ってきてくれたのでしょう。
「ありがとう♡」
こうやって物々交換が始まるのでしょうね。というのを改めて感じながら、私はトイラを受け取りました。
その時、日が暮れ始めていることに気付きます。
今からなら仲間の下に戻るまで間に合うとは思うものの、少し心配にもなります。
すると、そんな私に、
「ビアンカ、店は私がいるからラレアトを送ってあげなさい」
と声が掛けられました。少佐でした。
交代の時間はまだ先でしたが、少佐がこうおっしゃるのですから、
「ラレアト、おうちまで送ってあげる」
私は別れを惜しむように見上げていたラレアトにそう提案したのでした。
「ゴアアッ!!
伍長とブオゴは互いに一歩も引くことなくぶつかり合い、僅かに間合いを取ったかと思うと、二人して森の中に駆け込んでいってしまいました。
戦いの場を移すということなのでしょう。
まあ、どちらかが命を落とすようなことがあっても、彼らとしては互いに承知の上なので、別に構わないのでしょうし。
「ブオゴ、センシ。ホコリタカイ。タタカッテシヌ、センシ、ノ、メイヨ」
と言ってましたからね。
実際、猪人達にとっては戦って命を落とすことこそが名誉なのだそうです。病気とか事故とかで死ぬのは不名誉なのだとか。
そして、寿命で死ぬことも。
地球人類の世界ではすでに否定されているそういう考え方も、ここでは生きているんです。
けれど私達は、自分達を優れた者として、彼らを卑しい未開の蛮族として見下し、地球人類の価値観を押し付けることは避けるようにしています。
ノーラの件にしても、山羊人達の中にもノーラを見捨てられないトームを見捨てられないという考えがあればこそ力になっただけですし。
その点、猪人には、
『戦って死ぬことこそが誇り』
という考えを疑う空気さえありません。今のところは。となれば口出しもできません。
で、伍長とブオゴがいなくなったところに、
「コン~♡」
聞き覚えのある声、
ラレアトでした。
「いらっしゃいませ~♡」
可愛らしいお客に、私も笑顔になります。でも、今日の分のナヌヘは食べてしまったのに、どうしたのでしょうか?
するとラレアトは、
「トイラ、アゲル…♡」
そう言って彼女は植物の束を差し出しました。
<トイラ>と呼ばれる、地球の<フキ>に似た植物でした。独特の苦味があってラレアト達はあまり食べないのですが、逆に私達にはちょうど良い食材の一つでした。私達には消化できない成分もほとんど含まれない。
たぶん、ナヌヘのお礼として採ってきてくれたのでしょう。
「ありがとう♡」
こうやって物々交換が始まるのでしょうね。というのを改めて感じながら、私はトイラを受け取りました。
その時、日が暮れ始めていることに気付きます。
今からなら仲間の下に戻るまで間に合うとは思うものの、少し心配にもなります。
すると、そんな私に、
「ビアンカ、店は私がいるからラレアトを送ってあげなさい」
と声が掛けられました。少佐でした。
交代の時間はまだ先でしたが、少佐がこうおっしゃるのですから、
「ラレアト、おうちまで送ってあげる」
私は別れを惜しむように見上げていたラレアトにそう提案したのでした。
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