獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
39 / 404

大変な面も

しおりを挟む
とまあ、そういうわけで私達はここで<よろずや>を営みながら平穏に暮らしてるというわけです。

お客もなく、穏やかに時間が過ぎていくことに、私はいつしかうつらうつらと居眠りをしていました。

その時、

「あ~!」

ノーラの声でハッとなります。

「いけない…!」

私は慌ててあらかじめ用意してあったノーラの食事を持って部屋に行きました。

ノーラに食事を出しつつ、赤ん坊のオムツを替えます。

人間の赤ん坊のように大きな声で泣いたりはしないものの、オムツはすっかりウンチとおしっこで大変な状態でした。

仕方ないので、日当たりのいいところに置いてあった<ぬるい水>を使ってお風呂に。

獣人達にはまだオムツを使う習慣がないので、基本的に赤ん坊のウンチやおしっこはそのまま垂れ流しなことが多いですが、私達はさすがにそこまで割り切れないため、ノーラの赤ん坊については人間のやり方でやらせてもらいます。ノーラ自身がまともに育児をできませんので。

とは言え、湯沸かし器が完備されていてボタン一つで適温のお湯が出てくるような環境でもありませんから、完全には人間社会のそれで行くこともできません。

また、獣人達は基本的に私達人間よりも非常に頑健なので、赤ん坊を洗うのも冷たすぎる水でなければ大丈夫でした。

さすがに体を洗おうとすると、「みいみい」と泣きますが。

ノーラはその泣き声が気になるのか視線を向けつつも自分の食事を優先しています。

彼女には、『人間で言うところの発達障害がある』と言いましたが、彼女には他の山羊人やぎじんなら当たり前にできることができないという面があるのです。知能そのものは必ずしも低くないのに、

『言語野が未発達』

という以外にも、

山羊人やぎじんとしての常識が理解できない』

山羊人やぎじんとしての習慣がこなせない』

という特徴がありました。子供の面倒を見ようとしないのもその影響でしょうね。

人間の場合、

『子育てできないなら子供なんか作るな!』

と言われるところではありつつも、獣人達にはまだそこまでの分別はないようです。しかもノーラの赤ん坊の父親は、主食となる植物を求めて流浪する種族でもあり、ノーラも本来はそうなのですが、彼女にはそれについていけるだけの能力がないのです。

だからそもそもは生きていくこともできない個体だとも言えます。

しかし、獣人達の間にも、ノーラのような存在を庇おうという気持ちは芽生え始めているようです。

ただ、実際には、それを確実に行うためのノウハウが十分ではないこともあって、共倒れになりかねないというのも現実でした。

そこで私達がノーラと赤ん坊を預かり、保護しているというのもあります。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

異世界に行けるようになったので胡椒で成り上がる

兎屋亀吉
ファンタジー
ある日倒れているおじいさんにモ〇バーガーを奢ったら異世界に転移した。もらった魔法具の力で現実世界と異世界を行き来できるようになった俺は、異世界貿易の基本である胡椒の密輸を始めた。

スキル【海】ってなんですか?

陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜 ※書籍化準備中。 ※情報の海が解禁してからがある意味本番です。  我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。  だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。  期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。  家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。  ……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。  それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。  スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!  だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。  生命の海は思った通りの効果だったけど。  ──時空の海、って、なんだろう?  階段を降りると、光る扉と灰色の扉。  灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。  アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?  灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。  そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。  おまけに精霊の宿るアイテムって……。  なんでこんなものまで入ってるの!?  失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!  そっとしておこう……。  仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!  そう思っていたんだけど……。  どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?  そんな時、スキルが新たに進化する。  ──情報の海って、なんなの!?  元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

すもも太郎
ファンタジー
 王宮からリストラされた精霊の守護者だったアキは土の精霊から愛されまくるおっさんだった。アキの左遷は最悪な結末を王宮にもたらす事になったのだ。  捨てられたアキは左遷先で出会った風の精霊とともに南の島を目指して旅だってしまう。その後、左遷先に王宮からの使者がアキを探しに来るが、時すでに遅しであった。   (以下ネタバレを含みます)  アキは第二の人生として、楽園でスローライフを楽しんでいたのだが隣国の王から祖国の深刻な状況を聞かされて復興の為に本国に戻ることを約束する。そこで見たものは死臭を放つ王都だった。可愛らしい元悪役令嬢の魔女っ子と問題を解決する旅に出る事で2人の運命は動き出す。 旅、無双、時々スローライフなお話。 ※この作品は小説家になろう(なろう)様でも掲載しております

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

身バレしないように奴隷少女を買ってダンジョン配信させるが全部バレて俺がバズる

ぐうのすけ
ファンタジー
呪いを受けて冒険者を休業した俺は閃いた。 安い少女奴隷を購入し冒険者としてダンジョンに送り込みその様子を配信する。 そう、数年で美女になるであろう奴隷は配信で人気が出るはずだ。 もしそうならなくともダンジョンで魔物を狩らせれば稼ぎになる。 俺は偽装の仮面を持っている。 この魔道具があれば顔の認識を阻害し更に女の声に変える事が出来る。 身バレ対策しつつ収入を得られる。 だが現実は違った。 「ご主人様は男の人の匂いがします」 「こいつ面倒見良すぎじゃねwwwお母さんかよwwww」 俺の性別がバレ、身バレし、更には俺が金に困っていない事もバレて元英雄な事もバレた。 面倒見が良いためお母さんと呼ばれてネタにされるようになった。 おかしい、俺はそこまで配信していないのに奴隷より登録者数が伸びている。 思っていたのと違う! 俺の計画は破綻しバズっていく。

処理中です...