獣人のよろずやさん

京衛武百十

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なんじゃこりゃぁ~っ!?

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『なんじゃこりゃぁ~っ!?』

と私が声を上げてしまった時、

「ビアンカ! 君もか!」

私の耳に届いてきた声。

「少佐っ!?」

思わず振り返った私の視界に飛び込んできたのは、透明な体に加えて水の滴がキラキラと煌き、まさに氷の芸術品のように言葉を失うほどの美しさの少佐の姿でした。

そう、少佐も私と同じように透明な体になっていたのです。

全裸で。

と言っても今回は私も少佐も透明なので、何とも言えない違和感はありつつも、『恥ずかしさ』という意味ではむしろ前回の<転送>よりはマシかもしれません。

しかも、私だけが透明だったらいろいろと辛かったとしても、少佐も同じでしたし。

ただ、さすがにこの異常な事態には戸惑わずにいられませんでしたが。

「今度は透明な体とは……いったい、どれだけの驚きを私達に提供してくれるんだろうね」

岸に上がり、周囲を窺って一応の安全を確認した後、少佐が呟きます。

「まったくです…!」

私も共感しかありません。けれどそれを嘆いていても仕方ありません。こうして体が変化したということについてはきっと何らかの理由があるのでしょう。

それも気になりつつも、まずは私達がいるこの場所について確認しなければいけません。

ですが、一見しただけで私達がさっきまでいた場所とは植生そのものが違うことが分かります。あちらは針葉樹的なそれだったものが、こちらは明らかに広葉樹を思わせる木々が生い茂っていたのですから。

かつ、湿度もやや高い印象でしょうか。

また、遠くに見えていた、アルプスを思わせる山々も今はありません。

「前のところと地続きの場所だとしても、少なくとも数百キロ単位で離れていると考えるのが妥当か……」

「そうですね……」

「しかし、あの<現象>に巻き込まれた隊員達の証言には、このような形での<転送>を窺わせるものはなかった」

「はい、それどころか、時間が経過していたという実感はないというものでしたね」

「そうなると、やはり、帰ってきた者達は皆、『バックアップデータから再現された』と考えるのが自然で、巻き込まれた側は今の私達と同じく別の場所に転送されたと考えるのが自然かもしれない……」

その少佐の見解に異論を述べるだけの根拠はこの時の私にはありませんでした。

ですが、次の瞬間、

「デレラ…!」

不意に掛けられる声。何を言っているのかは分かりませんでしたが、この時の私には、

『誰だ!?』

と言っているように聞こえました。明らかに警戒し詰問する時のそれだったのです。

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