26 / 404
データそのものは
しおりを挟む
「ありがとう…ビアンカ……君のおかげで僕は役目を果たせてる……」
十枚アレクセイ達のグループと別れてから数年。こちらでの暮らしにもすっかり慣れた頃、少佐は私にそんな風におっしゃってくれました。
そしてこの頃には、私は少佐と、
『限りなく交際してるのに近い』
関係でした。少佐が真面目過ぎてグループのリーダーとしての務めに気持ちを傾け過ぎてて、
『特定の相手だけを特別扱いできない』
って身構えちゃってて、交際を認めてくれないんですよ。
もっとも、他の仲間達からは、
『さっさと結婚すればいいのに……』
とは思われてましたけどね。ってか、
「ビアンカ、あの朴念仁をとっとと観念させなさい! 見てて歯痒いったらありゃしない!!」
「私達はあんたの味方だからね!」
とまで言ってくれてました。はい。
あの相堂伍長でさえ、
「なんでお前ら結婚しないんだ? バカじゃないのか?」
なんてことを……
でも、いいんです。そういうところが少佐らしくって、カワイイんです♡
……と、そんなこんなで私達は平穏に暮らしていました。
ただ、その一方で、<この世界>でちょっと気になることが……
「少佐、またですか?」
「ああ…ここから先に進めなくなっている……」
私と一緒に定時パトロールに出ていた時、少佐は普段のルートからは外れた場所で立ち止まり、そう言いました。
それは、まるで、見えない壁でもあるかのように、私達が先に進むことを拒んでいました。
しかも、どことなく景色もぼんやりとしている気がします。
これと同じことは、以前からも何度かありました。
ただ、早ければ数時間。長くても数日でその異常は解消されるのです。このことからも、
『この世界は非常に高度なシステムの中に構築された<仮想世界>であり、サーバー等の異常によって一時的に制限がかかってしまう』
のだろうと推測されていました。結果的に、
『私達はシミュレーターの中にいる』
という仮説を裏付ける根拠にもなっています。
とはいえ、一時的に行けなくなってもすぐに解消されますし、仲間がその場所に入った状態で同じこともありましたが、解消されれば普通に戻ってこれたので、データそのものが損なわれるとかいう類のトラブルではないと見られていました。
でも、
『データは損なわれない』
としても、それはあくまでどこかにバックアップがあることで復元されるだけで、
『その場に有ったデータそのものは果たしてどうなったのか?』
という問題はあったのでしょう。
そして私達はこの後、自らそれを知ることになったのです……
十枚アレクセイ達のグループと別れてから数年。こちらでの暮らしにもすっかり慣れた頃、少佐は私にそんな風におっしゃってくれました。
そしてこの頃には、私は少佐と、
『限りなく交際してるのに近い』
関係でした。少佐が真面目過ぎてグループのリーダーとしての務めに気持ちを傾け過ぎてて、
『特定の相手だけを特別扱いできない』
って身構えちゃってて、交際を認めてくれないんですよ。
もっとも、他の仲間達からは、
『さっさと結婚すればいいのに……』
とは思われてましたけどね。ってか、
「ビアンカ、あの朴念仁をとっとと観念させなさい! 見てて歯痒いったらありゃしない!!」
「私達はあんたの味方だからね!」
とまで言ってくれてました。はい。
あの相堂伍長でさえ、
「なんでお前ら結婚しないんだ? バカじゃないのか?」
なんてことを……
でも、いいんです。そういうところが少佐らしくって、カワイイんです♡
……と、そんなこんなで私達は平穏に暮らしていました。
ただ、その一方で、<この世界>でちょっと気になることが……
「少佐、またですか?」
「ああ…ここから先に進めなくなっている……」
私と一緒に定時パトロールに出ていた時、少佐は普段のルートからは外れた場所で立ち止まり、そう言いました。
それは、まるで、見えない壁でもあるかのように、私達が先に進むことを拒んでいました。
しかも、どことなく景色もぼんやりとしている気がします。
これと同じことは、以前からも何度かありました。
ただ、早ければ数時間。長くても数日でその異常は解消されるのです。このことからも、
『この世界は非常に高度なシステムの中に構築された<仮想世界>であり、サーバー等の異常によって一時的に制限がかかってしまう』
のだろうと推測されていました。結果的に、
『私達はシミュレーターの中にいる』
という仮説を裏付ける根拠にもなっています。
とはいえ、一時的に行けなくなってもすぐに解消されますし、仲間がその場所に入った状態で同じこともありましたが、解消されれば普通に戻ってこれたので、データそのものが損なわれるとかいう類のトラブルではないと見られていました。
でも、
『データは損なわれない』
としても、それはあくまでどこかにバックアップがあることで復元されるだけで、
『その場に有ったデータそのものは果たしてどうなったのか?』
という問題はあったのでしょう。
そして私達はこの後、自らそれを知ることになったのです……
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完結】もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です
堀 和三盆
恋愛
「それじゃあ、ちょっと番に会いに行ってくるから。ええと帰りは……7日後、かな…」
申し訳なさそうに眉を下げながら。
でも、どこかいそいそと浮足立った様子でそう言ってくる夫に対し、
「行ってらっしゃい、気を付けて。番さんによろしくね!」
別にどうってことがないような顔をして。そんな夫を元気に送り出すアナリーズ。
獣人であるアナリーズの夫――ジョイが魂の伴侶とも言える番に出会ってしまった以上、この先もアナリーズと夫婦関係を続けるためには、彼がある程度の時間を番の女性と共に過ごす必要があるのだ。
『別に性的な接触は必要ないし、獣人としての本能を抑えるために、番と二人で一定時間楽しく過ごすだけ』
『だから浮気とは違うし、この先も夫婦としてやっていくためにはどうしても必要なこと』
――そんな説明を受けてからもうずいぶんと経つ。
だから夫のジョイは一カ月に一度、仕事ついでに番の女性と会うために出かけるのだ……妻であるアナリーズをこの家に残して。
夫であるジョイを愛しているから。
必ず自分の元へと帰ってきて欲しいから。
アナリーズはそれを受け入れて、今日も番の元へと向かう夫を送り出す。
顔には飛び切りの笑顔を張り付けて。
夫の背中を見送る度に、自分の内側がズタズタに引き裂かれていく痛みには気付かぬふりをして――――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる