獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
18 / 404

水着もどき

しおりを挟む
人間というのは不思議なもので、この雑な作りの<水着もどき>でさえ身に付ければなんだかホッとできました。

そこからは足取りも軽く、元の場所に戻ります。

「あ? ビアンカも?」

互いの姿が見えた途端、私と同じように探索に入っていたドリスが声を上げます。彼女も私とまったく同じく<ホオバに似た葉>で水着のようなものを作り、身に付けていたのです。しかも、私以上に多くの葉を抱えて。

「うわ~! 助かる。さすがに全裸っていうのは厳しいからね」

女性のメンバーの一人が満面の笑みでドリスに駆け寄ってきました。他の女性メンバーもそれに続いて、ドリスと私に駆け寄ってきます。

そうしてまず希望する女性メンバーに葉を渡すと、さすがに私達が説明するまでもなく葉脈を使って糸をまず作り、それを葉に通して手際よく<水着もどき>を作っていきました。

男性メンバーは遠慮していたようですけど、もちろん希望する人もいるでしょうから、二度目の探索で同じように<ホオバに似た葉>を採集し、持ち帰ります。

こうなると全裸でも平然としていたメンバーも流れに乗って次々と<水着もどき>を作っては身に着けていったのでした。



しかし、取り敢えず身に着けるものは確保できたものの、食べられそうな果実らしきものは確保できたものの、ここにいる三十一人以外のメンバーは発見できず、何故私達がここにいるのかを解明できそうな手掛かりになるものも発見できませんでした。

とは言え、差し迫った脅威も見当たりませんでしたので、私達はまず生活の基板となるものを、それぞれ役割を分担し作り始めたのです。

私達軍人チームは、基本的に<武器>の製作を。

<武器>と言っても、必ずしも外敵との戦闘を想定しているわけではありません。むしろ<狩猟用の道具>として作っていると言った方がいいでしょう。

湖には魚が住み、森には小動物が生息していることが確認できました。

食用に適するかどうかは随時確認しなければいけませんが、水質には問題ないことが十枚とおまいアレクセイ達によって確認されましたので、そこに住む魚であれば食用になるものがいる可能性の方が高いでしょう。

私達人間にとって適した水質の水に住めるという時点で、生物として近い形質を持つということでしょうから。

そしてその水辺に住む生物にも同じことが言えるでしょう。

無論、それでも毒を有する生物もいる可能性はあるので、用心に越したことはありませんが。

さりとて、食用になるかどうかは捕まえてみないと分からないというのも事実。

そのために、私達軍人チームは、小動物を捕らえる用の罠作りも役目だったのでした。

しおりを挟む

処理中です...