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襲撃
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全身を丁寧に洗い…と言っても、実は河の泥に含まれる鉱物の粉を植物の油で溶いた、いわば、
<天然のファンデーション>
で皮膚の色を再現してるのは、顔と手足の、あくまで目に付くところだけですが。服で隠れている部分までは塗っていません。
なので本当は、服を脱いだ時点で普通の人間の体をしていないことは……
いえ、実際には、私達の<目>を見れば<普通>じゃないことはその時点で分かりますね。何しろ、染料で染めた髪と顔に塗ったファンデーションの所為で暗くなっているだけの<頭の中>が透けて見えているだけなので、<眼球>そのものが黒っぽい茶色に見えているのですから。
そう。私と少佐と伍長の体は、完全に透明なのです。全身くまなく。皮膚も骨も内臓も髪の毛も眼球も血液もすべて。
それは、本来なら有り得ないことでしょう。私達がいた、銀河暦千年、西暦で言えば三千七百年代の世界の技術でも、こんな体は作れません。物理的に有り得るはずがないんです。
なのに私達はこうして存在し、生きています。ただただ透明なだけで、以前となんら変わらない、生理機能も身体機能も完全に人間のそれと同じ。何も違わないんです。何も……
最初に『本来の私は』と言ったのは、これが原因です。
私達三人は、その肉体の機能も能力も本来のそれとはまったく変わらないのに、記憶も人格もそのままなのに、
『厳密には人間ではない』
のです。人間のそれではありえないこの透明な体の所為で、私達は、本来の世界では、
『人間として認められない』
でしょう。
どうしてこんなことになったのか、詳しくお話します。
私達、外宇宙惑星探査チーム<コーネリアス>が、N8455星団において途方もない異常事態に遭遇し、ある惑星に不時着することになったのは、すでにお話ししたとおりです。
それが、銀河歴一〇五一年三月七日のこと。
こうして私達はその惑星でサバイバル生活をすることになったのですが、ある日、謎の生物……いえ、それが本当に生物なのかどうかすら今も確認はできていないのですが、とにかくその謎の存在の襲撃を受け、私や少佐や伍長を含む三十一名が命を落としたのでした。
……命を落としたはずなのです。
私ははっきりと見ました。コーネリアスのチームリーダーでもある<十枚アレクセイ>とそのパートナーであった<秋嶋シモーヌ>が謎の存在に取り込まれ、瞬時に肉体が溶解していくのを。
肉体が溶解された人間が生きていられるはずがありません。
そして、襲われた仲間達を守るために戦おうとした少佐も……
何しろ、今の私達と同じく<透明な体>をもち、それでいて完全に決まった形を持たない、<アメーバ>と呼ばれる不定形生物を思わせるそれには、銃もナイフもロケット砲も一切通じず、仲間達は成す術なく取り込まれ、溶かされていったのでした……
<天然のファンデーション>
で皮膚の色を再現してるのは、顔と手足の、あくまで目に付くところだけですが。服で隠れている部分までは塗っていません。
なので本当は、服を脱いだ時点で普通の人間の体をしていないことは……
いえ、実際には、私達の<目>を見れば<普通>じゃないことはその時点で分かりますね。何しろ、染料で染めた髪と顔に塗ったファンデーションの所為で暗くなっているだけの<頭の中>が透けて見えているだけなので、<眼球>そのものが黒っぽい茶色に見えているのですから。
そう。私と少佐と伍長の体は、完全に透明なのです。全身くまなく。皮膚も骨も内臓も髪の毛も眼球も血液もすべて。
それは、本来なら有り得ないことでしょう。私達がいた、銀河暦千年、西暦で言えば三千七百年代の世界の技術でも、こんな体は作れません。物理的に有り得るはずがないんです。
なのに私達はこうして存在し、生きています。ただただ透明なだけで、以前となんら変わらない、生理機能も身体機能も完全に人間のそれと同じ。何も違わないんです。何も……
最初に『本来の私は』と言ったのは、これが原因です。
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『厳密には人間ではない』
のです。人間のそれではありえないこの透明な体の所為で、私達は、本来の世界では、
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でしょう。
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それが、銀河歴一〇五一年三月七日のこと。
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……命を落としたはずなのです。
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何しろ、今の私達と同じく<透明な体>をもち、それでいて完全に決まった形を持たない、<アメーバ>と呼ばれる不定形生物を思わせるそれには、銃もナイフもロケット砲も一切通じず、仲間達は成す術なく取り込まれ、溶かされていったのでした……
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