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命の章

話がある!!

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実は、アオ自身も子供の頃は、表面上は大人しそうにしながらもその内面は鼻持ちならない傲慢な人間だった。他人を見下し自分だけが正しいと思っていた。なので、さくらの前で見せる<傲岸不遜な作家先生キャラ>は、ある意味ではアオの<素>の一部であるとも言える。

しかし現在では、そんな自分を恥じてもいる。それは結局、そういうのが人間関係を拗れさせるのだというのを理解させてくれた出逢いがあったからだろう。

幸いアオは、そういう出逢いを活かせる部分があったことで、アオ自身が救われたのだ。

対して彼女の両親や兄は、それができなかった。今後もしそれができるようになればまだ望みはあるかもしれないが、今のままで突き進んでやがて身を滅ぼすことになろうとも、もう知ったことでないとも思っていた。

そんな風に思えてしまう冷淡さ冷酷さは、両親や兄と似ているだろう。彼女もしっかりと受け継いでしまっているのである。

それでも、彼女にとって恨みもある両親や兄以外に対してはそんな面をなるべく向けようとしない程度には、自分を律することもできている。

だから、さくらもアオを信頼することができていた。

なので、今後のことについても何も心配はしていない。

ただその一方で、さくらは、妊娠を報告した上司に、

「はあ? 子供ができた? 何言ってんだお前? 仕事はどうすんだ? これだから女は……!」

と言われてしまった。

子供が生まれるということは、将来の<お客>や<従業員>になってくれる人間が生まれるということでもある。つまりこの上司は、将来お客になってくれるかもしれない存在を蔑ろにしているのと同じなのだ。

子供が生まれてくれなければ市場も労働力も先細っていくしかないというのに、創造的な仕事をしていながらそのことに思いが至らない近視眼的な上司に呆れながらも、この反応そのものは想定の内だったので、さくらとしては聞き流すだけだった。

無闇に反発してもこの上司は聞く耳を持つことはないだろう。そんなことにかかずらってはいられない。

が、それに憤ったのはアオだった。その話を聞いた瞬間は、さくらとあきらがいた手前抑えたものの、

「おい! 副編集長を出せ! 話がある!!」

と出版社に電話を掛けて件の上司である副編集長を呼び出し、

「お前! 私の担当に対して『何言ってんだお前?』だの『これだから女は』だのホザいたらしいな!? 私は彼女がいるからここの仕事を引き受けてるんだ! 彼女を蔑ろにするということは私を蔑ろにしてるのと同じだからな!? なんだったら契約を打ち切ってもいいんだぞ!?」

と吠えたのだった。

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