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はぐくみの章
お母さん
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『あなたは、私を地獄になんて堕とさないでしょ?』
さくらの言葉に、エンディミオンは、彼女をまっすぐに見詰め返して、
「ああ……もちろんだ……」
と返した。彼の気持ちがそこには込められていただろう。
過去は消せない。恨みは消えない。けれど、それでもなお生きていくこの先を考えなければいけない。
だとすれば、さくらを地獄に堕とすような真似はできない。少なくとも、彼女と一緒にいる間だけは。
「ありがとう…エンディミオン……」
さくらはそう言って、また彼の唇に自らの唇を重ねていった。
そして、彼の舌を絡めとる。挨拶などのそれじゃない、はっきりとした<愛の営み>としてのキスだった。
エンディミオンも、それを受け入れた。
長く、長く、絡み合うようなキスをして、息継ぎをするかのように離れ、また見詰め合った。
エンディミオンは、幼い子供のような姿をしているものの、既にれっきとした男性としての能力も兼ね備えてた。ましてや実年齢はさくらよりもはるかに年上だし、女性との経験もあった。
だから彼の部屋で、二人は求め合った。じゃれ合うようなそれではなく、新しい命を紡ぐための男女の営みとして。
実はこの時、二人は気付かなかったが、エリカがその部屋の隅に立ち、二人のそんな様子をとてもあたたかい目で見守っていた。
エリカ自身は子を生すことはなかったものの、それを妬むでもなく、洸の兄弟が生まれることを望んでくれていただろう。
やがて二人が抱き合ったままでまどろみ始めると、エリカはスッと二人に近付き、言った。
「洸をよろしくね……」
しばらくまどろんだ後、二人は再度風呂に入って互いの体を洗った。出逢った時にはあんなに険しい表情をしていたエンディミオンも、とても穏やかな表情でさくらを愛しむように。
そうしてさっぱりすると二人で三階の寝室に行き、洸を間に挟んでベッドに横になった。
その後、二人が寝息を立て始めると、再びエリカが姿を現した。そして何かを確かめるようにさくらの体に触れる。
「ああ…いいね……とてもいい……とても安らぐ……とても惹かれる……
お母さん……今度は悲しませたりしないから……」
エリカの呟きは、ダンピールとしてのエンディミオンの超感覚ですら聞き取れなかったようだ。穏やかに眠る三人をしばらく見つめてから、さくらの体に重なるようにして、エリカの姿がフッと消えていく。
と、
「……おねえちゃん、バイバイ……」
洸の口から小さく声が漏れた。完全に寝ているけれど、確かに洸はそう言ったのだった。
さくらの言葉に、エンディミオンは、彼女をまっすぐに見詰め返して、
「ああ……もちろんだ……」
と返した。彼の気持ちがそこには込められていただろう。
過去は消せない。恨みは消えない。けれど、それでもなお生きていくこの先を考えなければいけない。
だとすれば、さくらを地獄に堕とすような真似はできない。少なくとも、彼女と一緒にいる間だけは。
「ありがとう…エンディミオン……」
さくらはそう言って、また彼の唇に自らの唇を重ねていった。
そして、彼の舌を絡めとる。挨拶などのそれじゃない、はっきりとした<愛の営み>としてのキスだった。
エンディミオンも、それを受け入れた。
長く、長く、絡み合うようなキスをして、息継ぎをするかのように離れ、また見詰め合った。
エンディミオンは、幼い子供のような姿をしているものの、既にれっきとした男性としての能力も兼ね備えてた。ましてや実年齢はさくらよりもはるかに年上だし、女性との経験もあった。
だから彼の部屋で、二人は求め合った。じゃれ合うようなそれではなく、新しい命を紡ぐための男女の営みとして。
実はこの時、二人は気付かなかったが、エリカがその部屋の隅に立ち、二人のそんな様子をとてもあたたかい目で見守っていた。
エリカ自身は子を生すことはなかったものの、それを妬むでもなく、洸の兄弟が生まれることを望んでくれていただろう。
やがて二人が抱き合ったままでまどろみ始めると、エリカはスッと二人に近付き、言った。
「洸をよろしくね……」
しばらくまどろんだ後、二人は再度風呂に入って互いの体を洗った。出逢った時にはあんなに険しい表情をしていたエンディミオンも、とても穏やかな表情でさくらを愛しむように。
そうしてさっぱりすると二人で三階の寝室に行き、洸を間に挟んでベッドに横になった。
その後、二人が寝息を立て始めると、再びエリカが姿を現した。そして何かを確かめるようにさくらの体に触れる。
「ああ…いいね……とてもいい……とても安らぐ……とても惹かれる……
お母さん……今度は悲しませたりしないから……」
エリカの呟きは、ダンピールとしてのエンディミオンの超感覚ですら聞き取れなかったようだ。穏やかに眠る三人をしばらく見つめてから、さくらの体に重なるようにして、エリカの姿がフッと消えていく。
と、
「……おねえちゃん、バイバイ……」
洸の口から小さく声が漏れた。完全に寝ているけれど、確かに洸はそう言ったのだった。
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