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家憑き童子の章
コネクト
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「……?」
しばらく二階で遊んでいる洸の気配を感じつつ軽く食事をとっていたエンディミオンだったが、ふと、それまでとは違う気配に顔を上げた。
『誰だ……? 誰かいるのか……?』
話し声がするのだ。と言っても、エンディミオンの聴覚でさえ捉えられるのは洸の声だけだったが。
なので何気なく階段を上り、そっと様子を窺ってみた。
すると、洸がジャングルジムに上っている姿が見えた。
「すっごいでしょ! おねえちゃん! おねえちゃん!」
と、誰かに話しかけながら。しかし、洸が視線を向けている先には、何もいない。エンディミオンの超感覚ですらそこに何かがいるという気配すら捉えられない。洸は完全に、虚空に向かって話しかけているのだ。
人間であればこういう時、何か得体の知れないものを感じてゾッとしてしまうところかもしれないが、ダンピールであるエンディミオンにはそういう感覚がそもそもなかった。
『<記憶>とコネクトしてるということか……?』
そう察してしまったのである。
『記憶とコネクト』
それは、エンディミオンがさくらに話した<この世で起こったことすべての記憶>と繋がってしまうことを意味していた。
人間でも特に感受性の強い者ではたまにあることだ。
エンディミオンも話に聞いたことがあるだけで本人はその経験はなかったものの、<記憶>の中ではまるで生きているかのように人格もそのままで、実際に生きている相手と話すように会話もできてしまうのだという。
『ふん……『おねえちゃん』と呼んでいるということは、例の<エリカ>とかいう奴の記憶とコネクトしている状態か……』
そう解釈して、エンディミオンはそれ以上構うこともせず、一階に戻って食事の後片付けをし、自室にこもって寝てしまったのだった。
そしてそれから二時間ほどして、さくらが起きてきた。
時刻は朝の八時。
見ると、二階の床で洸が寝ている。
「あららら…!」
朝の気配に目が覚めてしまったものの、一通り遊んだらまた眠ってしまったようだ。
人間とは違って布団で寝なくても風邪を引いたりはしないとは聞いていたが、さすがにこれにはちょっと焦ってしまう。
「洸、こんなところで寝てちゃダメだよ」
ついそう声を掛けてしまった。
「……おはよう……」
やや寝惚けた様子で洸が体を起こし、それから周囲を見回して、
「あれ…? おねえちゃん、かえっちゃった…?」
と口にした。
「お姉ちゃん?」
「うん、おねえちゃんとあそんでた」
その言葉に、さくらもハッとなる。
今のこの状況で洸が『お姉ちゃん』と呼ぶのは誰かということに気付いてしまったのである。
しばらく二階で遊んでいる洸の気配を感じつつ軽く食事をとっていたエンディミオンだったが、ふと、それまでとは違う気配に顔を上げた。
『誰だ……? 誰かいるのか……?』
話し声がするのだ。と言っても、エンディミオンの聴覚でさえ捉えられるのは洸の声だけだったが。
なので何気なく階段を上り、そっと様子を窺ってみた。
すると、洸がジャングルジムに上っている姿が見えた。
「すっごいでしょ! おねえちゃん! おねえちゃん!」
と、誰かに話しかけながら。しかし、洸が視線を向けている先には、何もいない。エンディミオンの超感覚ですらそこに何かがいるという気配すら捉えられない。洸は完全に、虚空に向かって話しかけているのだ。
人間であればこういう時、何か得体の知れないものを感じてゾッとしてしまうところかもしれないが、ダンピールであるエンディミオンにはそういう感覚がそもそもなかった。
『<記憶>とコネクトしてるということか……?』
そう察してしまったのである。
『記憶とコネクト』
それは、エンディミオンがさくらに話した<この世で起こったことすべての記憶>と繋がってしまうことを意味していた。
人間でも特に感受性の強い者ではたまにあることだ。
エンディミオンも話に聞いたことがあるだけで本人はその経験はなかったものの、<記憶>の中ではまるで生きているかのように人格もそのままで、実際に生きている相手と話すように会話もできてしまうのだという。
『ふん……『おねえちゃん』と呼んでいるということは、例の<エリカ>とかいう奴の記憶とコネクトしている状態か……』
そう解釈して、エンディミオンはそれ以上構うこともせず、一階に戻って食事の後片付けをし、自室にこもって寝てしまったのだった。
そしてそれから二時間ほどして、さくらが起きてきた。
時刻は朝の八時。
見ると、二階の床で洸が寝ている。
「あららら…!」
朝の気配に目が覚めてしまったものの、一通り遊んだらまた眠ってしまったようだ。
人間とは違って布団で寝なくても風邪を引いたりはしないとは聞いていたが、さすがにこれにはちょっと焦ってしまう。
「洸、こんなところで寝てちゃダメだよ」
ついそう声を掛けてしまった。
「……おはよう……」
やや寝惚けた様子で洸が体を起こし、それから周囲を見回して、
「あれ…? おねえちゃん、かえっちゃった…?」
と口にした。
「お姉ちゃん?」
「うん、おねえちゃんとあそんでた」
その言葉に、さくらもハッとなる。
今のこの状況で洸が『お姉ちゃん』と呼ぶのは誰かということに気付いてしまったのである。
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