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家憑き童子の章

間取り

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せっかくなので、家についても詳しく触れておくことにしよう。

現在の建築基準法に即したことにより十五坪弱に抑えられることとなった代わりに三階建てとすることで居住空間を確保。一階は先ほども述べたとおりにリビングとエンディミオンの部屋、そしてリビングと半ば一体化したシステムキッチンが設けられ、敢えて玄関スペースを最小限に切り詰めて、さくらが以前住んでいたワンルームマンションのそれと同じく、玄関ドアを開けるとほとんどリビング全体を見渡せてしまうもののその分、広さを感じる造りとなっていた。

これにより、一階部分だけで体感的には以前の部屋と変わりない空間を確保してある。

なお、玄関ドアについては、外側に<住居部分>とは見做されない、<玄関に沿うように設置された温室>というていで透明な樹脂製の壁に囲まれた部分を作り、そこを実質的な玄関とすることで、

『玄関を開けたらすぐに部屋が丸見え』

という形にならないように工夫されていた。

もちろん、建前上とはいえ温室ではあるので、そこで花などを育てられるようにプランターが設置されている。

上手くすれば、『美しい花で客を迎える』という風にもできるだろう。

また、トイレはさすがに住居部分に収められたものの、以前に建っていた家からヒントを得て、バスルームも<裏庭に設置された温室に設けられた外風呂>というていで、家本体とは別に造られたものだった。

これは、バスルームはどうしても傷みが早くなるので、その傷みが家の躯体に影響を及ぼすことのないようにという意味もある。まあもっとも現在の建築技術であればそれほど気にする必要もないので、こちらもあくまで建前であり、実際にはバスルームに割かれる面積をリビングに振り分ける為にとられた手法である。

そして、無論、外からは見えないように、バスルームそのものは大きめのユニットバスが使われているし、脱衣所の部分は乳白色の不透明なパネルに覆われていた。

工事中、アオと一緒にこれを見たさくらは、

「ムチャクチャですね……」

と呆れたという。しかしアオは逆に、

「はっはっは! 呆れてもらえてむしろ光栄だ!」

などと悦んでいたが。

と、一階部分についてはこれくらいにして、二階へと移ろう。

二階へと上がる階段はリビングの一部となったいわゆる<リビング階段>で、こちらも感覚的な広さを演出するのに役立っている。

ただ、リビング階段はどうしてもリビングにいる人間と顔を合わせることになるので、どうしてもという場合の為に、階段部分をカーテンで覆うこともできるようにはなっていた。

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