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家憑き童子の章
調査
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時間は少々遡り、建て替えの工事が始まる以前、地下の調査が行われていた。
重機で基礎のコンクリートを斫り、地面を露出させる。それから慎重に重機で土を掘り返す。
自衛隊の調査で他にはもう不発弾は埋まっていないと確認はされたものの、やはり緊張感はあった。
あらかじめ、エンディミオンに倣って何度も丁寧に地下を探査したミハエルはもう大丈夫だと確信していたけれど。
すると、小型のパワーショベルの一掻きでそれは現れた。
「!?」
鉄製の何かが現れた時には現場の作業員達に緊張が奔ったものの、それがただの鉄板だと分かってホッとした空気が広がった。
しかしそれでも完全に緊張感は解けない。その下に何が埋まっているかはまだ分からないから。
さらに慎重に土をどけて完全に鉄板を露出させる。すると、端にワイヤーを掛けるのにちょうどいい穴が開いていたことで、<玉掛け>を行い、防空壕ないし地下室と思しき空間を塞いでいたらしき鉄板をどける。
「……」
現場にいた誰もが、遺体などが出てくる可能性を考え、その時に備えて覚悟を決めていた。
「穴だ…!」
作業員の一人が声を上げる。それは、人一人が余裕で通れそうな、コンクリートで固められた穴だった。
「……」
作業を見守っていたアオも、緊張のあまりミハエルの腕をぎゅっと掴んでしまった。ミハエルはそんなアオの手にそっと自身の手を触れさせる。彼女を安心させる為に。
念の為に面体を付けた作業員が慎重に穴に近付き、有毒なガスなどが発生していないかを専用の装置で確かめる。しかし、幸いにもそれらしい反応はなかった。そこで今度は、照明を差し込んで穴の中を照らした。
「……あ!」
と作業員の体が竦むのが見えた。
『まさか、死体が……!?』
そう思ったアオだったが、しかし作業員は、
「なんだ、人形か……!」
ホッとしたように言ったのだった。
そう。灯に照らし出されて、一瞬、人影のように見えたものがあったものの、よく見ればそれは椅子に座った大きな人形だったのだ。
さらに作業員は照明で穴の中を隅々まで照らし、危険がないことを確認し、
「大丈夫みたいです。確かめてもらえますか?」
現在の所有者であるアオに向かって声を掛けた。
死体や何か異様なものはないとのことで少しホッとしたアオだったものの、やはり不安はあって、恐る恐る穴を覗き込んでいく。
一方のミハエルは、そんなアオの手をしっかりと掴んで励ましてくれていた。
と同時に、平然と穴を覗き込んだのだった。
重機で基礎のコンクリートを斫り、地面を露出させる。それから慎重に重機で土を掘り返す。
自衛隊の調査で他にはもう不発弾は埋まっていないと確認はされたものの、やはり緊張感はあった。
あらかじめ、エンディミオンに倣って何度も丁寧に地下を探査したミハエルはもう大丈夫だと確信していたけれど。
すると、小型のパワーショベルの一掻きでそれは現れた。
「!?」
鉄製の何かが現れた時には現場の作業員達に緊張が奔ったものの、それがただの鉄板だと分かってホッとした空気が広がった。
しかしそれでも完全に緊張感は解けない。その下に何が埋まっているかはまだ分からないから。
さらに慎重に土をどけて完全に鉄板を露出させる。すると、端にワイヤーを掛けるのにちょうどいい穴が開いていたことで、<玉掛け>を行い、防空壕ないし地下室と思しき空間を塞いでいたらしき鉄板をどける。
「……」
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「穴だ…!」
作業員の一人が声を上げる。それは、人一人が余裕で通れそうな、コンクリートで固められた穴だった。
「……」
作業を見守っていたアオも、緊張のあまりミハエルの腕をぎゅっと掴んでしまった。ミハエルはそんなアオの手にそっと自身の手を触れさせる。彼女を安心させる為に。
念の為に面体を付けた作業員が慎重に穴に近付き、有毒なガスなどが発生していないかを専用の装置で確かめる。しかし、幸いにもそれらしい反応はなかった。そこで今度は、照明を差し込んで穴の中を照らした。
「……あ!」
と作業員の体が竦むのが見えた。
『まさか、死体が……!?』
そう思ったアオだったが、しかし作業員は、
「なんだ、人形か……!」
ホッとしたように言ったのだった。
そう。灯に照らし出されて、一瞬、人影のように見えたものがあったものの、よく見ればそれは椅子に座った大きな人形だったのだ。
さらに作業員は照明で穴の中を隅々まで照らし、危険がないことを確認し、
「大丈夫みたいです。確かめてもらえますか?」
現在の所有者であるアオに向かって声を掛けた。
死体や何か異様なものはないとのことで少しホッとしたアオだったものの、やはり不安はあって、恐る恐る穴を覗き込んでいく。
一方のミハエルは、そんなアオの手をしっかりと掴んで励ましてくれていた。
と同時に、平然と穴を覗き込んだのだった。
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