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けもけもの章
ミハエル・アルツィバーシェヴァ
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『あの家の地下空間に何があるんだろう?』
一度それが気になりだすといてもたってもいられなくなるのがアオの性分でもあった。
「よし! あの家を買おう! 買って地下を調べよう!」
預金通帳を確認し、はっきりとそう決心する。
「ええ!? 大丈夫なんですか!?」
「大丈夫大丈夫、よゆーよゆー」
以前にも言った通り、アオは普段は散財しないタイプなので、あの家を即金で買ったとしても半分以上残る。つまり、相場通りの金額であればさすがに躊躇うところだったが、何の因果かちょうど無理なく買えてしまう金額だったのだ。
「私があの家を買って、借家としてお前に貸す。お前は家賃を払ってくれればいい。それで万事OKだ」
「いえいえそんな簡単な話じゃないですよ。大きなお金が絡むんですから」
さくらはあくまで慎重だったが、アオはもう完全にその気だった。
「お前が住むかどうかは別にしても、私はあの家を買うぞ。気になって仕方ないのだ。あの家を買って地下を調べる。土地と預金を担保にして金を借りてリフォームという名目で地面を掘り返してな。その後のことはその時にまた考える」
「そんな行き当たりばったりな……」
「だが、私がこういう奴だというのはお前も分かってるはずだ。今さらだよ」
「それはそうですけど……」
さくらの心配をよそに、アオはその翌日には手続きを済ませ、即金で買い取ってしまったのである。
「本当に大丈夫なんですか……?」
「大丈夫大丈夫。な、ミハエル」
アオの言葉に、ミハエルも、
「うん。いざとなったら僕の預金もあるし」
と余裕の表情だった。
「え? でも、ミハエル君は事実上の不法滞在ってことになるんじゃ…? 預金なんてどこに……?」
「ああ、それについても心配ないよ。昔の伝手を使って、<ミハエル・アルツィバーシェヴァ>として正式に入国したことにしたから」
「え…ええ!? そんなことできるんですか!?」
驚くさくらに、ミハエルは平然と、
「だって、僕は吸血鬼だし。人間としての身分なんて全部、必要に応じて作っただけのものなんだ。だから本当は<不法滞在>にもならない。人間じゃないから。渡り鳥が国境を越えても不法入国にはならないでしょ?
<ミハエル・アルツィバーシェヴァ>っていう名前も、十年ほど前に作ったものだよ。その名義であちこちに口座も作ってる。
そのまま日本に送金するっていうのは簡単じゃないけど、仮想通貨を買ってそれを日本で換金すればいい。便利な世の中になったね」
と応える。
「……それって、マネーロンダリングにあたりませんか?」
さくらの懸念も当然だろうが、その辺りは、ミハエルにとっては、と言うか吸血鬼にとっては普通のことだったのである。
一度それが気になりだすといてもたってもいられなくなるのがアオの性分でもあった。
「よし! あの家を買おう! 買って地下を調べよう!」
預金通帳を確認し、はっきりとそう決心する。
「ええ!? 大丈夫なんですか!?」
「大丈夫大丈夫、よゆーよゆー」
以前にも言った通り、アオは普段は散財しないタイプなので、あの家を即金で買ったとしても半分以上残る。つまり、相場通りの金額であればさすがに躊躇うところだったが、何の因果かちょうど無理なく買えてしまう金額だったのだ。
「私があの家を買って、借家としてお前に貸す。お前は家賃を払ってくれればいい。それで万事OKだ」
「いえいえそんな簡単な話じゃないですよ。大きなお金が絡むんですから」
さくらはあくまで慎重だったが、アオはもう完全にその気だった。
「お前が住むかどうかは別にしても、私はあの家を買うぞ。気になって仕方ないのだ。あの家を買って地下を調べる。土地と預金を担保にして金を借りてリフォームという名目で地面を掘り返してな。その後のことはその時にまた考える」
「そんな行き当たりばったりな……」
「だが、私がこういう奴だというのはお前も分かってるはずだ。今さらだよ」
「それはそうですけど……」
さくらの心配をよそに、アオはその翌日には手続きを済ませ、即金で買い取ってしまったのである。
「本当に大丈夫なんですか……?」
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と余裕の表情だった。
「え? でも、ミハエル君は事実上の不法滞在ってことになるんじゃ…? 預金なんてどこに……?」
「ああ、それについても心配ないよ。昔の伝手を使って、<ミハエル・アルツィバーシェヴァ>として正式に入国したことにしたから」
「え…ええ!? そんなことできるんですか!?」
驚くさくらに、ミハエルは平然と、
「だって、僕は吸血鬼だし。人間としての身分なんて全部、必要に応じて作っただけのものなんだ。だから本当は<不法滞在>にもならない。人間じゃないから。渡り鳥が国境を越えても不法入国にはならないでしょ?
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そのまま日本に送金するっていうのは簡単じゃないけど、仮想通貨を買ってそれを日本で換金すればいい。便利な世の中になったね」
と応える。
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