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けもけもの章

ますます面倒な

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「ところで、例のアニメの件なんだが、放送も終わったというのに何やらますます面倒なことになってきているらしいな」

人間の姿になってミルクを飲むあきらを抱くさくらに、アオはそう話しかけた。

「ああ、あれですね? どうやら制作側の関係者で自重しなかった方がいらっしゃったとか」

「うむ。私は基本的に他人の作品に対してはあくまで<受け手側>だから敢えて受け手側に厳しい考え方をするんだが、<送り手側>として考えると、正直、あの対応には違和感しか覚えない」

「ええ、分かります。私はそれこそ出版社の人間ですから、あの集中攻撃に納得できないという気持ちも想像できなくはないんです。同情したいという気持ちもあるというのは正直なところです。

ただ、それを差し引いても今回のやり方は賛同できないですね」

「確かに。私が自分の作品を袋叩きにされても何も反論しないのは、結局それなのだ。<世間>を相手に闘ったところで、失うものはあっても得るものは何もないと私は思ってる。

だってそうだろう? こっちは身元を明かしているのに、<世間>の殆どは身元も明かさず好き勝手言うような連中だぞ? 都合が悪くなれば逃げてしまえるんだ。

さすがに脅迫とかの刑事事件ともなってくれば法的に対処してどこの誰かを突き止めることはできても、そこまでにいらたないものであれば<匿名>を盾に逃げ切れる。身元がバレている側は圧倒的に不利だ。

だからといって自分も匿名を盾に反撃しようとしても、人間、ついうっかりということはどうしてもある。そうして尻尾でも掴まれてしまえば、余計に状況を悪くするだけだ。

今回の件がどうかは私は知らん。だが、世間に対してさらなる攻撃のための口実と材料を与える形になったのは、悪手どころか完全な『墓穴を掘った』状態だろう。

私は、世の中のそういう諸々から教訓を得ることを是としている。<他山の石>というやつだ。他人の失敗をわざわざ自分が繰り返す必要はあるまい?

もっとも、こと作品づくりに関して言えば、今のやり方を改めるつもりは現時点ではないがな。

批判や批評がアニメや漫画や小説の質を向上させるだなどという幻想をいつまで信じるつもりかは知らんが、それが本当に作品の質を上げるというのなら、『最近のアニメはつまらなくなった』『最近の漫画はつまらなくなった』『最近の小説はつまらなくなった』などという話が出てくるワケがないではないか。

そういう話が出てくる時点で、批判や批評が作品の質を向上させるなんていう思い込みが幻想でしかないという何よりの証拠だろう。

作品の質を上げたいというのなら、最終的には自分の手で作るしかないのだ。それを思ってアニメや漫画や小説の道を目指した者も少なくないと思う。

しかしそれでもなお何だかんだと叩かれる。

ま、要するに『言うは易し、行うは難し』ってことだな」

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