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平穏の章
的外れ
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「読者や視聴者は、本当に好き勝手なことを言う。特に業腹なのが、<技術論>を云々する輩だ。
好きか嫌いかは分かるのだ。それはあくまで当人にしか持ちえない判断基準だから、当人が語るしかないというのは。
しかし、技術的なことを云々する輩は何様かと思う。
偉そうに言うのなら、お前にそれ以上のものが作れると言うのか?
と、こう言うと今度は、
『そんなことしてる暇ないしwwwww』
とか言うのだ。さらに中には、
『作った奴しか批評できないって言うのなら、殺人犯について語れるのは殺人犯だけなのかよ?』
などと屁理屈を言うのまでいる。
あのな。<殺人の技術>について語ろうとするなら確かに実際にやってみないと語れないかもしれないが、殺人犯を批判する場合、殺人の技術について云々するか? 普通はしないだろうが。『殺人という行為は許されない』とだけ言うのであれば、別に殺人犯でなくても構わんだろうが。
と言うか、むしろ殺人を犯してない人間でないと『殺人という行為は許されない』とは言いにくいのではないのか?
このテンプレを作った奴は『自分は上手いこと言った』と思ってるかもしれないが、的外れもいいところだな。
……いや、もしかしたら作った当人は既にそのことに気付いてて恥じているかもしれないな。言葉だけが当人の手を離れて勝手にテンプレとして利用されているだけで。
『自身の語る野球論を実証してみせるために監督になる』などというのはさすがに難しいとしても、今時、マンガや小説やシナリオを発表するだけなら、いつでも誰でも気軽に無料でできるようになってるじゃないか。
たったそれだけのこともやって見せずに、技術を云々するでないわ!」
「言いたいことは分かりますけど、さすがにそれは極論じゃないですか? 描写や演出に対する感想はあっても当然だと思いますけど……」
「まあな。言うのは別にいいのだ。<言論の自由>がある以上は。だが、素人の技術論ほど小賢しいものはない。
大学時代の教授が言っていたよ。
『評論家などというものは、その道のプロになれなかった、なれるだけの技量がなかった人間がなるものだ』
ってな。
職業に貴賤はない。<言論の自由>は認められてる。しかし、バックボーンのない発言に力はないのだ。
教授はこうも言っていた。
『真っ当な評論家は、自身の言葉が単なる<感想>でしかないことを承知している。自身の感性を語っているに過ぎないことを承知している。だが、だからこそ<受け手の意見>たりえるんだよ』
と。
確かにそうだ。例えば映画を見た時に感じたものを、自らの主観で、かつ他人にも理解できる理路整然とした言葉で綴るからこその<評論>なんだろう。
そこに小賢しい技術論など入る余地はない。
自身が触れたものをどう感じたかが大事なんだろうからな」
好きか嫌いかは分かるのだ。それはあくまで当人にしか持ちえない判断基準だから、当人が語るしかないというのは。
しかし、技術的なことを云々する輩は何様かと思う。
偉そうに言うのなら、お前にそれ以上のものが作れると言うのか?
と、こう言うと今度は、
『そんなことしてる暇ないしwwwww』
とか言うのだ。さらに中には、
『作った奴しか批評できないって言うのなら、殺人犯について語れるのは殺人犯だけなのかよ?』
などと屁理屈を言うのまでいる。
あのな。<殺人の技術>について語ろうとするなら確かに実際にやってみないと語れないかもしれないが、殺人犯を批判する場合、殺人の技術について云々するか? 普通はしないだろうが。『殺人という行為は許されない』とだけ言うのであれば、別に殺人犯でなくても構わんだろうが。
と言うか、むしろ殺人を犯してない人間でないと『殺人という行為は許されない』とは言いにくいのではないのか?
このテンプレを作った奴は『自分は上手いこと言った』と思ってるかもしれないが、的外れもいいところだな。
……いや、もしかしたら作った当人は既にそのことに気付いてて恥じているかもしれないな。言葉だけが当人の手を離れて勝手にテンプレとして利用されているだけで。
『自身の語る野球論を実証してみせるために監督になる』などというのはさすがに難しいとしても、今時、マンガや小説やシナリオを発表するだけなら、いつでも誰でも気軽に無料でできるようになってるじゃないか。
たったそれだけのこともやって見せずに、技術を云々するでないわ!」
「言いたいことは分かりますけど、さすがにそれは極論じゃないですか? 描写や演出に対する感想はあっても当然だと思いますけど……」
「まあな。言うのは別にいいのだ。<言論の自由>がある以上は。だが、素人の技術論ほど小賢しいものはない。
大学時代の教授が言っていたよ。
『評論家などというものは、その道のプロになれなかった、なれるだけの技量がなかった人間がなるものだ』
ってな。
職業に貴賤はない。<言論の自由>は認められてる。しかし、バックボーンのない発言に力はないのだ。
教授はこうも言っていた。
『真っ当な評論家は、自身の言葉が単なる<感想>でしかないことを承知している。自身の感性を語っているに過ぎないことを承知している。だが、だからこそ<受け手の意見>たりえるんだよ』
と。
確かにそうだ。例えば映画を見た時に感じたものを、自らの主観で、かつ他人にも理解できる理路整然とした言葉で綴るからこその<評論>なんだろう。
そこに小賢しい技術論など入る余地はない。
自身が触れたものをどう感じたかが大事なんだろうからな」
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