118 / 291
平穏の章
面白いと思う理由
しおりを挟む
「いやはや、『面白いと思う理由を述べよ』とか、完全に、『私のどこが好き?』とか訊いてくる<面倒臭い彼女と>と同じ考え方だよな」
「ああ、それ分かります。ホントにそれですね。面白いとか好きとか、その理由は人それぞれなのに、いちいち理由を説明させようっていうその考えが傲慢だと思います」
「まったくだ。しかもそうやって理由を問い質そうとする意図が、最初から相手を否定してバカにしてやろうという魂胆によるものだと見え見えなんだ。理由を説明できなければ、『理由も説明できないのかよwwww』と貶すことを目的にしてる。
『何となく面白いと思うから面白い』というふんわりした理由の何が悪い? 他人の<面白いと思う理由>や<好きな理由>を評定できるほどご立派な人間なのか? 何様だ?」
「何度も言いますけど、それ、ネットとかには発信しないでくださいね。私の前だけでならいいですけど」
「ああ、分かってる。<チラシの裏>というやつだ」
苦笑いしながら、アオはミハエルが入れてくれたコーヒーを一口含み、「ふう…」と一呼吸入れた。その上でまた口を開く。
「…今期のあれの出来が前作に比べて劣るかもしれないという印象は、確かに私も抱いているのだ。だが、それでも私は、今期のあれを貶す気にはなれない。
それは、私自身が創作者だからというのもある。他人が作ったものを見るのと、自身が実際に作るのとでは違うのだ。
しかも私は、自分に<才能>などというものがあるとは思っていない。私はただ、自分が描きたいと思ったものをただ描きたいように書き殴って、その中から<商品>になりそうなものをお前に選んでもらってるだけだ。
そんな私が他人の<作品>にケチをつけるなど、おこがましいにも程がある。せっかく提供してくれているものについては楽しみたいだけなのだ。
それでも、私にとってはどうしても合わない作品もある。そういう時にはもうとにかく見ない。無理して見ても精神衛生上よくないしな。
どうしてそれができないのか、私には理解できん。
まあ、私は昔からどうもマイノリティ体質だったらしいんだが。
なにしろ、私は、周りの同好の士が<プ〇キュア>にハマっていた頃、<仮面ラ〇ダー>にハマっていたのだ。
その中でも特に好きだったのは<響〇>でな。
周りの女の子でも<仮面ラ〇ダー>好きはいたが、誰も<響〇>には見向きもしなかった。それどころかメインターゲットである男の子らにも評判が悪かったようだ。
でもそれはまだ良かったのだ。私がショックだったのは、当時大学生だった同好の士が、
『あんなのは<仮面ラ〇ダー>じゃない!』
って言い放ったことだった……」
「ああ、それ分かります。ホントにそれですね。面白いとか好きとか、その理由は人それぞれなのに、いちいち理由を説明させようっていうその考えが傲慢だと思います」
「まったくだ。しかもそうやって理由を問い質そうとする意図が、最初から相手を否定してバカにしてやろうという魂胆によるものだと見え見えなんだ。理由を説明できなければ、『理由も説明できないのかよwwww』と貶すことを目的にしてる。
『何となく面白いと思うから面白い』というふんわりした理由の何が悪い? 他人の<面白いと思う理由>や<好きな理由>を評定できるほどご立派な人間なのか? 何様だ?」
「何度も言いますけど、それ、ネットとかには発信しないでくださいね。私の前だけでならいいですけど」
「ああ、分かってる。<チラシの裏>というやつだ」
苦笑いしながら、アオはミハエルが入れてくれたコーヒーを一口含み、「ふう…」と一呼吸入れた。その上でまた口を開く。
「…今期のあれの出来が前作に比べて劣るかもしれないという印象は、確かに私も抱いているのだ。だが、それでも私は、今期のあれを貶す気にはなれない。
それは、私自身が創作者だからというのもある。他人が作ったものを見るのと、自身が実際に作るのとでは違うのだ。
しかも私は、自分に<才能>などというものがあるとは思っていない。私はただ、自分が描きたいと思ったものをただ描きたいように書き殴って、その中から<商品>になりそうなものをお前に選んでもらってるだけだ。
そんな私が他人の<作品>にケチをつけるなど、おこがましいにも程がある。せっかく提供してくれているものについては楽しみたいだけなのだ。
それでも、私にとってはどうしても合わない作品もある。そういう時にはもうとにかく見ない。無理して見ても精神衛生上よくないしな。
どうしてそれができないのか、私には理解できん。
まあ、私は昔からどうもマイノリティ体質だったらしいんだが。
なにしろ、私は、周りの同好の士が<プ〇キュア>にハマっていた頃、<仮面ラ〇ダー>にハマっていたのだ。
その中でも特に好きだったのは<響〇>でな。
周りの女の子でも<仮面ラ〇ダー>好きはいたが、誰も<響〇>には見向きもしなかった。それどころかメインターゲットである男の子らにも評判が悪かったようだ。
でもそれはまだ良かったのだ。私がショックだったのは、当時大学生だった同好の士が、
『あんなのは<仮面ラ〇ダー>じゃない!』
って言い放ったことだった……」
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
月灯
釜瑪 秋摩
キャラ文芸
ゆったりとしたカーブを描くレールを走る単線は駅へと速度を落とす。 白樺並木の合間にチラリとのぞく大きなランプがたたえる月のような灯。 届かなかった思いを抱えてさまよい、たどり着いたのは……。 少しだけ起こる不思議の中に人の思いが交差する。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……
ma-no
キャラ文芸
お兄ちゃんの前世が猫のせいで、私の生まれた家はハチャメチャ。鳴くわ走り回るわ引っ掻くわ……
このままでは立派な人間になれないと妹の私が奮闘するんだけど、私は私で前世の知識があるから問題を起こしてしまうんだよね~。
この物語は、私が体験した日々を綴る物語だ。
☆アルファポリス、小説家になろう、カクヨムで連載中です。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
1日おきに1話更新中です。
吸血鬼を拾ったら、飼われました ~私の血はどうやら美味しいみたいです~
楪巴 (ゆずりは)
キャラ文芸
自ら灰になろうとしていた吸血鬼・トワを知らず助けてしまった柚姫(ゆずき)。
助けた責任をとって、血を提供しろってどういうこと~!?
さらに謎の美青年・チトセ(9話登場♡)まで現れて柚姫を取り合う事態に……モテ期到来!?
「お前なんかに、柚姫はわたさん!」
「私は、欲しいものは必ず手に入れます」
トワもチトセさんも、ケンカはやめて~っ!!
コミカルあり、シリアスありの吸血鬼×女子高生の物語、ここに開幕――
※ 第5回キャラ文芸大賞にて、奨励賞をいただきました!! たくさんの応援、ありがとうございます✨
※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~
二位関りをん
キャラ文芸
桃玉は10歳の時に両親を失い、おじ夫妻の元で育った。桃玉にはあやかしを癒やし、浄化する能力があったが、あやかしが視えないので能力に気がついていなかった。
しかし桃玉が20歳になった時、村で人間があやかしに殺される事件が起き、桃玉は事件を治める為の生贄に選ばれてしまった。そんな生贄に捧げられる桃玉を救ったのは若き皇帝・龍環。
桃玉にはあやかしを祓う力があり、更に龍環は自身にはあやかしが視える能力があると伝える。
「俺と組んで後宮に蔓延る悪しきあやかしを浄化してほしいんだ」
こうして2人はある契約を結び、九嬪の1つである昭容の位で後宮入りした桃玉は龍環と共にあやかし祓いに取り組む日が始まったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる