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エンディミオンの章

告白

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『ショタい少年と一緒にお風呂に入る』

こう言うと多くの人間が思い浮かべるであろう、<サービスシーン>とも言われるような展開は、しかしこの二人の間では起こらなかった。

さくらは本当に、幼い弟を、もしくは我が子の体を洗ってあげるように丁寧に、たっぷりとした泡を絡ませた素手で洗い上げているだけで、その表情はむしろ、慈愛に満ちた、母性に満ちた、穏やかなものだっただろう。

おそらく、エンディミオンが大人しく体を洗われていたのも、彼女が性的に興奮してるとか、彼の体に直に触れて『ハアハア』してるとかそういうのが一切なかったから、安心していたのかもしれない。

事実、彼はこの時、

『母親ってのは…普通はこういうものなんだろうか……』

と思っていただけである。

彼は、実の母親についての記憶はほとんどない。彼を引き取ったバンパイアハンターは愛想のない冷酷なタイプだったから、優しくしてもらった記憶もない。

エンディミオンは、母親のぬくもりといったものを知らずに育ったのだった。

彼とて既にかなりの長い人生を送ってきているから女性と触れ合う機会もないわけではなかった。しかしそのどれもが、彼を淫猥な目で見て弄びたいだけの、淫魔のような女達だった。彼の記憶の中には、今のさくらのような女性はいなかったのだ。

体の隅々まで、敏感なところまで丁寧に洗われたものの、やはりその時にもさくらの表情が変わることはなかった。

彼女は終始、欠片ほども彼のことを性的な目で見ることはなかった。

彼女にとって彼は、そういう対象でないのがよく伝わってくる一時だっただろう。

一緒に湯船に浸かっても、それは何も変わらなかった。

「私ね、六歳離れた弟がいたんですよ……両親は共働きで忙しくて、私があの子の母親役でした。だから、あなたとこうして一緒にお風呂に入って、あの頃のことを思い出してしまったんですよね」

訊かれてもないのに、まるで独り言のようにそう話す彼女に、エンディミオンも言葉を返していた。

「その弟は、今どうしてる……?」

彼女の口ぶりにある種の予感を覚えながらも、敢えて問う。

するとさくらは、寂しそうに呟くように応えたのだ。

「亡くなりました……事故で…呆気なく……そのことがきっかけで両親の関係も上手くいかなくなって、私は一時期、施設に預けられていたんです。

その後、父親に引き取られましたけど、ちょっとぎくしゃくしちゃって……

父も母も、いい人なんです。大切なことは、二人から教わりました……

だけど、心は弱かったんですよね……二人とも……」

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