上 下
19 / 291
ミハエルの章

吸血衝動

しおりを挟む
「そうか、これがうどんなんだ…! ロシアで食べたのとは全然違う…!」

輝くような笑顔でそう言うミハエルに、霧雨、いや、アオは、自分が褒められたように嬉しくなって、

「あはは♡ これでも冷凍のうどんだから、ホントに美味しいお店のに比べれば『それなり』なんだよ。もしよかったら今度、お店のうどんを食べに行こうか?」

と提案した。

「いいの? それは楽しみだ…!」

喜ぶミハエルの姿は、本当に子供のようだった。

『これで私よりずっと年上とか、信じられないな。成長が遅い分、精神的な部分の成長もゆっくりなのかもしれないけど。

ああでも、すごく大人びて見えることもあるから、やっぱりただ子供なだけじゃないのかもね』

うどんを啜りながらそんなことを考えてしまう。

『でも、そのアンバランスさがまたミステリアスで、いいね…♡』

ミハエルと一緒の時間を満喫し、アオはお腹だけじゃなく心も満たされていくのを感じていた。

でも同時に、ふと思ってしまって、

「吸血鬼も、人間の食べ物を普通に食べられるんだね」

頭に浮かんだことがそのまま声に出てしまった。

それに対してもミハエルは事もなげに、

「食べられるよ」

と応えた。だがその後ですぐ、

「ただ、すごくお腹が減ってたりすると吸血衝動を抑えるのが難しい時はある。お姉さんの血を貰った時がそうだったんだ」

とも付け足した。それでもアオは、平然としていたのだった。

「ふ~ん、そういうものなんだ?」



食事が終わっても何となく原稿に向かう気が起きず、アオは片付けをしてくれているミハエルに向かって言った。

「私、先にお風呂に入るね」

お風呂でさっぱりして気分を変えればまたやる気が出るかと思ったのである。

タイマーでセットしてあったからすぐに入れるし。

「分かった」

ミハエルもそう応じて、振り返る。

「♪~」

それに手を振りながら軽く鼻歌を歌いながら、アオはバスルームへと入った。

ただ、お風呂に入る度についつい意識してしまう。

『見た目は子供とはいえ、やっぱ<男性>なんだよね~。男性がいるところでこんな風に無防備になるのってなんか不思議……』

自分の小説の中でも、少年を男性として意識してしまうヒロインの姿を描いたりもしたが、実際に気になるものなのだと実感してしまった。

だがそれと同時に、

「彼は<合法ショタ>なんだし、一緒に入るってのも、許されるんじゃないかな~……」

と、体を洗いながら声に出してしまった。

「ああでも、こんなだらしない体の<オバサン>じゃ、彼の方が嫌かな~……」

なんてことも考えてしまった。

だから、『一緒に入ったりしたいな~♡』とは思いつつもそれは口に出せなかったのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

競馬ゲーム好きのオッサンが転生したら、競争メイドを育成する世界だった。

テツみン
ファンタジー
*本作品は11月末をもって、一旦、非公開にします。読者のみなさま、どうもありがとうございました。 アクセラ:「アクセラです」 プリム:「プリムでーす!」 アクセラ:「二人の『レースメイド』が、この物語の紹介をしますね」 プリム:「ねえ?『レースメイド』ってなに?」 アクセラ:「それはね、走力を競い合うメイド服を着たカワイイ少女たちのこと。その競技を『メイドレース』っていうの」 プリム:「なんで、そんな競技ができたの?」 アクセラ:「千年以上前のこと。戦争で疲弊した二つの大国が停戦に向けて交渉を行った時、『ウチのメイドは脚が速い』という話になって、『それじゃ競争しよう!』となったことが始まりらしいわ」 プリム:「えっ? そんな軽いノリで始まったの⁉」 アクセラ:「それ以来、国、貴族の権威は『メイドレース』の結果で決まるらしいの」 プリム:「ふーん。私たちって結構、重要な立場なんだね」 アクセラ:「貴族は脚の速い女性を囲い込むため、血縁関係になるの。いつの頃からか、大レースを勝つレースメイドは大貴族の令嬢ばかりになったわ」 プリム:「私たち、下級貴族出身じゃどんなにガンバっても、大貴族の令嬢にはかなわないのか……なんか世知辛い世の中だね……」 アクセラ:「この物語の主人公は新米レースメイド・トレーナー、ラオ・ススール。彼は日本と言う世界の記憶を持つ転生者なの」 プリム:「えっ? 転生者⁉」 アクセラ:「彼は転生前に好きだった競馬の知識を使って、いろいろ革新的なトレーニングをやったの。だけど、それが上司に受け入れられずクビになっちゃうんだって」 プリム:「ふーん……」 アクセラ:「そんな彼が偶然出会った田舎娘、ニーニャにレースメイドの素質を見出すの。そして、彼女のトレーナーとなって……」 プリム:「ふむふむ。それで、二人はどうなるの?」 アクセラ:「それは読んでのお楽しみ♪ この話は数奇な運命をたどる主人公と名もない田舎娘が、二人の夢と絆でメイドレースの頂点へ駆け上がっていくシンデレラストーリーなの!」 プリム:「なんか面白そう! それで、私たちは活躍するの?」 アクセラ:「それがずっと先なんだって」 プリム:「えっ? えぇぇぇぇっ⁉」

あやかしと神様の子供たち

花咲蝶ちょ
キャラ文芸
あやかしと神様シリーズ。 葛葉子と瑠香の息子、桂と薫の不思議体験ファミリーストーリーです。 子供たちが、いつの間にか迷い込んでしまう異界やあやかし、神様、宇宙人?と不思議な出来事を、家族で解決する物語です。 前作の あやかしと神様の《恋愛成就》《円満成就》《昔語》を、読んでもらえると嬉しいです。

唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜
ファンタジー
※ 2019年ファンタジー小説大賞 148 位! 読者の皆様、ありがとうございました! 裕福な商家の生まれながら身分は平民の悪役令嬢に転生したアンリが、ユニークスキル「クリエイト」を駆使してシナリオ改変に挑む、恋と冒険から始まる成り上がりの物語。 ※2019年10月23日 完結

国民的アイドルを目指していた私にとって社交界でトップを取るなんてチョロすぎる件

にわ冬莉
キャラ文芸
駆け出しのアイドルグループ「マーメイドテイル」のメンバーだった私、水城乃亜(みずきのあ)は、ある日、誰かにナイフで刺された。 目が覚めると知らない世界で、婚約破棄をされたばかりのリーシャ・エイデルという伯爵令嬢に転生していたのだった。 婚約破棄を申し出たアルフレッドは、妹のアイリーンとの結婚を望んでいるようだが、そんなのどうでもいい。 とにかくダンスを! 歌を! 大人しいリーシャを執拗に追い詰めるアイリーン。 だけど私、やられっぱなしで黙っていられるタイプじゃないの! 正々堂々、受けて立つわ! いつしか周りを巻き込んで、リーシャ(乃亜)は道を切り開く!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。

紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。 アルファポリスのインセンティブの仕組み。 ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。 どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。 実際に新人賞に応募していくまでの過程。 春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)

処理中です...