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ミハエルの章

満面の笑顔

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『少なくともお姉さんよりはずっと年上かな』

少年?がそう言った途端、蒼井霧雨の表情がパッと明るくなった。

『そっかぁ! <合法ショタ>だったかぁ、良かったぁ♡

合法なら何の心配も要らないじゃ~ん♡』

その一言でそれまで心にのしかかっていた懸念のすべてが雲散霧消するのを感じた。そして満面の笑顔で、床に膝をついたまま両手を広げ、

「いや~、誉高きノスフェラトゥのお役に立てたのなら光栄の極みです!」

といささか芝居がかった大仰な仕草で彼を歓迎する。

「お姉さん…、怒ってないの……?」

戸惑う彼が何とも言えない表情で問い掛けても、

「怒る? なぜ怒る必要があるんです? こんな栄誉なことを! 

私はずっと夢見てきたんです! いつかあなたのような人知を超えた存在が私を迎えに来てくださることを!

今日はまさに人生最良の日だ! 私が新しく生まれた日ですよ!!」

などと、高らかに歌い上げるかのように彼を讃えた。

それは彼女の本心だった。幼い頃からこういう日がくることを夢に見て、その想いを綴る為に<創作>という形を取ってきたのだ。

とは言え、現実ではやはりそのようなことはこれまで起こることなく、いつしか、

『もしかしたらギリ現実にも起こる可能性があるかもしれない』

ことを描くという方向にシフトチェンジし、

『人慣れしてない陰キャ少年なら、もしかしたら私みたいなのでも優しくしてあげれば思い通りにできたりするかも…』

なんて妄想を形にしたのが、プロデビュー作の<陰キャ少年のアラサーハーレム無双>だったのである。体裁としては、陰キャの少年が、焦りを抱えたアラサー女性達を手玉に取りハーレムを築いていくというものであったものの、実際には女性側が少年を誘導していたという話であった。

それまで発表してきたものは、基本的に、それこそ今回のような、<人ならざる少年>との出逢いと恋愛物語が多かったりもした。

しかしやはりそういう系統の物語はどうしても類似するものが多く埋もれてしまう為、同人という形で細々と発表を続けてきたというのが実際のところだっただろう。

それがまさに今、目の前に現実としてあるのだ。

『これを基にすれば、今までのよりもっとずっとリアルな、<人ならざる者との出逢いと恋物語>を描けるかも……!』

などという思考が頭をよぎる。だから彼女は言ってしまった。

「ねえ、もし行く当てとかがないのなら、ここに住まない?」

と。だから、むしろ少年の方が、

「え…? でも…いいの…? 僕、吸血鬼だよ……?」

と気圧されてしまったのだった。

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