JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

狂宴

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前にも言ったが、地球に居ついてる化生共の中には、やけに人間や地球に入れ込んでる奴らもいて、そいつらも人間に協力して戦っていたりもするのだ。

<光の使者>エルディミアンが人間に与えた力によって巨大ロボが顕現したと思えば、他方では汎用人型決戦兵器の人造人間が顕現したり、巨大な<怪獣>が顕現したりと、なかなかに混沌とした様相を呈していた。面白いものを考える奴らがいるな。だがどれもこれも人間の往生際の悪さの象徴であり、私にしてみれば愉悦でもある。精々、この戦いに花を添えてくれ。

「……!?」

そんな中、私の家に避難していた千歳が、ガラスが割れるような物音に気付き、ハッと自分達の部屋がある方に不安そうな視線を向けた。

「…なあ、この家は確かに結界に覆われてるけど、私らの家ってどうだったっけ…?」

ああ、それに気付いてしまったか。

そうなのだ。私の<家>は確かに結界で厳重に覆われているが、新伊崎千晶にいざきちあきと千歳の実家の方は当然、そんなことはない。そして、その実家の窓にも、特に結界は施していないのだった。だからそちらからは侵入できてしまうのだ。

「やばいやばいやばいやばい…!!」

何者かが自分達の部屋の方から近付いてくる気配を感じ、千歳は、今川いまかわが連れてきた剣道道場の生徒達を庇うようにして、リビングの端へと移動した。

その千歳と子供達をさらに庇うように、山下沙奈が立ちはだかる。

「……」

その目には、かつてのこいつからは想像もできないような強い力が込められていた。そして、裏の掃き出し窓が開けられそれが姿を現した瞬間、両手をそれに向かって差し出す。

そこから伸びた鋭い刃が、殆ど抵抗なく<それ>を貫く。<暴虐の隷獣>ヴィシャネヒルだった。そいつを、山下沙奈は自らの中に住まわせたゲベルクライヒナの刃で退けたのである。

私と共に暮らし、力のありようをその目で見、肌に触れて感じて、こいつもいつしかそれを使いこなせるようになっていたのだ。

ただし、今のように守るべきものを強く意識した時にしか現れないが。なにしろ、『この人を守る為にこいつを殺す!』って形で殺意を表に出さないといけないしな。

「先輩の留守を預かったのは私だから…!」

まったく。怯えて青い顔をして震えていたあの泣き虫はどこへ行ってしまったのやら。それはもう、立派に私の眷属の姿と言ってもいいだろう。

今でも暴力は苦手だ。戦いなどしたいとも思っていない。だが、自分の大切なものを問答無用で壊しにくる輩には立ち向かえるだけの胆力は備わったということだ。

「うひょーっ、沙奈ちゃんやるぅ!」

テレビモニター内で、石脇佑香いしわきゆうかがそう囃し立てた。

もっとも、ヴィシャネヒルが侵入したのは、こいつの悪戯だったんだがな。

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