JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

共闘開始

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「我々も!」と声を掛ける自衛隊員に対し、

「ここから先は私達でないと無理だから。妹達を頼みます」

と返してメヒェネレニィカを従えて、病棟の外へと走り出た。

そこではまだ、ドラゴンとクラゲ怪獣との戦いが続いていた。新伊崎千晶にいざきちあきもその様子を見ながら化生共を葬り去っていく。するとしばらくして、自衛隊の戦闘ヘリが現れた。

『……ドラゴンが攻撃されると面倒だな……』

と新伊崎千晶は思ったが、その戦闘ヘリはクラゲ怪獣のみを攻撃した。先程の自衛隊員達からの連絡を受け、ドラゴンは人間の味方であると理解していたのだ。

こうして、人間とドラゴンによる共闘が始まった。



「怪獣映画の自衛隊の活躍に憧れて自衛隊に入ったけどよ、まさか本当に怪獣の相手するとはなあ!」

自衛隊の戦闘ヘリの中で、隊員が思わずそう声を上げた。あまりの興奮でつい口に出てしまったのだろう。『余計なことを言ってないで集中しろ!』と指揮官からは怒鳴られてしまったが、正直、他の戦闘ヘリの隊員達も似たような状態だった。まあ無理もない。全長数十メートルのクラゲの怪獣とドラゴンの戦いに参加、しかもドラゴンとの共闘である。

別の隊員も思わず口走る。

「異世界でドラゴンと戦う羽目になった自衛隊のアニメがあったが、こっちはそのドラゴンと共闘とはね!」

そう言いながらチェーンガンを放つ。しかし相手が大きすぎて、しかも小さいクラゲに似た怪物の群体に過ぎんので、失われた分は新たに小さいのが融合してすぐに回復してしまった。

「自動回復MAXかよ! 報告します! 機関砲での攻撃では有効と認められません。ミサイル使用の許可願います!」

「ダメだ! 市民の避難が完了したという報告はない! ミサイルの使用は認められない!」

「現況報告! こちらが視認できる範囲内では生存者は既に確認できません! このままでは被害が拡大するだけです! ミサイル使用の許可を!!」

戦闘ヘリと指令所との間でそんなやり取りが行われている間にも、クラゲ怪獣とドラゴンとの怪獣プロレスは続いていた。ドラゴンは認識の一部を新伊崎千晶と共有している為、自衛隊の戦闘ヘリを敵としては見ていない。しかし、周囲への被害については殆どと言っていいほど配慮していなかった。

新伊崎千晶は自衛隊員のように訓練された人間ではないからだった。そういうことを考慮しつつ戦えるほどの能力はないのだ。それにもし巻き込まれた生存者がいたとしても、事が終われば私が全て巻き戻してくれると信じ、今はただ敵を倒すことだけに集中していたのだった。だから、炎のブレスも容赦なく使う。ドラゴンの口から放たれたそれが狙いを外れ市街地を焼き払ったとしてもだ。

その様子をライブ映像として見た指令所も、もはや躊躇っている場合ではないと判断するしかなかった。

「やむを得ん! ミサイルの使用を許可する! ただし、絶対に外すな!」

「了解!!」

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