JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

幼女爆轟

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「……」

「……」

相対した二人の幼女は、いや、幼女の姿をした二柱の邪神は、互いに狂気の笑みを浮かべていた。お互いの強さが分かってしまって、嬉しくてたまらないのだ。

一瞬早く黄三縞神音きみじまかのんが横へと奔ると、ショ=エルミナーレもついて奔った。それは音速を超え、衝撃波が周囲を叩く。

他の連中が邪魔にならないように邪魔をしないように、距離を取っただけである。そこももはや化生共に蹂躙されて既に人間はいない。自衛隊は健闘したが、物量が圧倒的過ぎた。まあ、ここは先遣隊が威力偵察に来ただけだったのもあって戦力が足りなかっただけで、他の場所では今でも健闘していたりするがな。

幼女の姿をした二柱の邪神にとっては、言葉など何の意味もなかった。一言も発することなくぶつかり合い、それによって生じた衝撃波が残った構造物を薙ぎ払う。そこに人間が入り込む余地はまったくない。下手に手出しをしようものなら巻き込まれて消滅するだけだ。

「がぁああぁぁあぁああっっっ!!」

「ぐぅおぉおぉぉおぉぉっっっ!!」

地鳴りにも似た雄叫びを上げながら、黄三縞神音とショ=エルミナーレが激しく衝突する。もう一人の私が苦戦したショ=エルミナーレと互角なのは少々業腹だがな。予期せず本来の自分の意識に目覚めてしまった私と、最初からそれ用に自分の体を作り上げてきた黄三縞神音では条件も違ってはいるが。

互いに幼女の体であるが故に制限はあるものの、その中でも容赦のないぶつかり合いに、空気は裂け地面は軋み、空間さえも捩じれ始めた。やれやれ、無茶苦茶だ。

単純な殴り合いでは互角と判断した黄三縞神音が、くあっと口を大きく開き、火球を放った。それが発生させる熱で周囲の空気が凄まじい速度で膨張し、それは音速さえ遥かに超えて高熱を伴った衝撃波となった。

爆轟が空間を裂き、空を突き抜け、黄三縞神音が放った火球本体はほぼ光の速さにまで達して宇宙を奔り月に到達した。月の表面が一瞬で蒸発し、質量の五分の一が失われ、その形を変えてしまった。幼女の体でこの威力である。もはや意味が分かるまい。

もちろん身を躱し直撃は免れたものの、途方もない輻射熱で体の半分を焼かれたショ=エルミナーレが完全にブチ切れていた。黄三縞神音を睨む目が憎悪で歪む。

両掌を顔の前でボールを掴むように向かい合わせると、その間の空間が一瞬のうちに歪む。重力崩壊だ。それによって極小のブラックホールを派生させたのである。実に、ブラックホールの底で生まれたこいつらしい力だった。

それを押し出すように放つと、周囲にあるあらゆるものがそのブラックホール目掛けて落ちていった。黄三縞神音もその重力に捕らえられ、抗おうとすることで体が引きちぎられていく。だが、極小のブラックホールは長時間そのバランスを維持することができない為、ほんの数秒で消滅した。残ったのは、体の半分が引きちぎられた黄三縞神音の姿だった。こちらの目も、凄まじい怒りで歪んでいた。

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