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最終章
見舞い
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その後、毎日、月城こよみと肥土透の二人は見舞いに行った。ゴールデンウイークに突入するとそれこそ朝からである。
その二人に次いでよく見舞いに行ったのが碧空寺由紀嘉だった。
「こんにちは」
遠慮がちに病室のドアを開ける碧空寺由紀嘉に、
「いらっしゃい♡」
と黄三縞亜蓮が笑顔で応える。いろいろとあった二人だったものの、完全にわだかまりが消えたわけではなかったものの、それでも決して険悪と言うような仲ではなくなってきていた。お互いにもう、過去にそれほど拘る必要がなくなってきていたのだ。
「ああ…ホント赤ちゃんって可愛いね♡」
ベビーベッドで眠る、黄三縞亜蓮の娘の黄三縞神音を覗き込み、碧空寺由紀嘉は頬を緩めていた。以前は、
「子供なんてウザいだけ」
などとも言っていたクセに、まったく現金な奴だ。それでも、まあ別に悪いことでもないだろう。基本的には好ましい変化だと言っても問題あるまい。
黄三縞亜蓮にしても、仮にもかつては<友達>とも称していた碧空寺由紀嘉のその変化を悪からず思っていた。
『由紀嘉もいろいろ辛かったんだもんね…』
そんなことも思う。
決して<いい人>ぶるつもりはなかったものの、今、自分が幸せだからか、素直にそんな風に感じることができたのだ。『幸せになって欲しい』とも。
こんなに幸せなのに、またいちいちいがみあって嫌な気分になるのはもったいないと考えることができたのだ。
そうやって黄三縞亜蓮が受け止めてくれるから、自分を毛嫌いしていないことが察せられるから、碧空寺由紀嘉もやはり素直になることができた。
人間関係とは、結局、そういうものだろう。
互いの存在を認めて受け入れるようにしなければ、受け入れられなくても当たり障りなく無駄に衝突しないようにしなければ、他人から疎まれるだけなのだ。
ただ、そのようにして互いを、許すとまでは言えなくても認める程度のことはできるようになった者がいるかと思えば、ひたすら拗らせていく奴もいるのが人間というものだろう。
実に面倒くさい話だがな。
こうして碧空寺由紀嘉が満たされた気分で、
「またくるね」
と笑顔で手を振って病室を出て、病院のエントランスを出てしばらく歩いたところで、
「?」
立ち塞がるようにして現れた人影があった。それを見た顔がみるみる青褪めていく。
「古塩く…」
そう言いかけた碧空寺由紀嘉だったが、最後まで口にすることはできなかった。
「…う……ぷ……?」
その場に崩れ落ちるように俯せに倒れ、僅かに痙攣する少女の体の下から、真っ赤な血が地面に広がっていったのだった。
その二人に次いでよく見舞いに行ったのが碧空寺由紀嘉だった。
「こんにちは」
遠慮がちに病室のドアを開ける碧空寺由紀嘉に、
「いらっしゃい♡」
と黄三縞亜蓮が笑顔で応える。いろいろとあった二人だったものの、完全にわだかまりが消えたわけではなかったものの、それでも決して険悪と言うような仲ではなくなってきていた。お互いにもう、過去にそれほど拘る必要がなくなってきていたのだ。
「ああ…ホント赤ちゃんって可愛いね♡」
ベビーベッドで眠る、黄三縞亜蓮の娘の黄三縞神音を覗き込み、碧空寺由紀嘉は頬を緩めていた。以前は、
「子供なんてウザいだけ」
などとも言っていたクセに、まったく現金な奴だ。それでも、まあ別に悪いことでもないだろう。基本的には好ましい変化だと言っても問題あるまい。
黄三縞亜蓮にしても、仮にもかつては<友達>とも称していた碧空寺由紀嘉のその変化を悪からず思っていた。
『由紀嘉もいろいろ辛かったんだもんね…』
そんなことも思う。
決して<いい人>ぶるつもりはなかったものの、今、自分が幸せだからか、素直にそんな風に感じることができたのだ。『幸せになって欲しい』とも。
こんなに幸せなのに、またいちいちいがみあって嫌な気分になるのはもったいないと考えることができたのだ。
そうやって黄三縞亜蓮が受け止めてくれるから、自分を毛嫌いしていないことが察せられるから、碧空寺由紀嘉もやはり素直になることができた。
人間関係とは、結局、そういうものだろう。
互いの存在を認めて受け入れるようにしなければ、受け入れられなくても当たり障りなく無駄に衝突しないようにしなければ、他人から疎まれるだけなのだ。
ただ、そのようにして互いを、許すとまでは言えなくても認める程度のことはできるようになった者がいるかと思えば、ひたすら拗らせていく奴もいるのが人間というものだろう。
実に面倒くさい話だがな。
こうして碧空寺由紀嘉が満たされた気分で、
「またくるね」
と笑顔で手を振って病室を出て、病院のエントランスを出てしばらく歩いたところで、
「?」
立ち塞がるようにして現れた人影があった。それを見た顔がみるみる青褪めていく。
「古塩く…」
そう言いかけた碧空寺由紀嘉だったが、最後まで口にすることはできなかった。
「…う……ぷ……?」
その場に崩れ落ちるように俯せに倒れ、僅かに痙攣する少女の体の下から、真っ赤な血が地面に広がっていったのだった。
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