JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

意表

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<カラリパヤット>とは、ウルミと同じくインド辺りに伝わる古い武術だった。なるほどナハトムはそれを体得していたのか。

「俺は本当はベトナム系なんだが、俺がまだ五歳になるかならないかの頃に親父が仕事で失敗して家族ごとインドに逃げてきてな。それで何かの役に立つかもってことでカラリパヤットを習わされてきたんだ。もっとも俺自身はそういうの全く興味なくて、正直嫌で嫌で。でも言うことを聞かないと親父が殴る蹴るだったんで、いつか親父をぶっ飛ばしてやれればと思うようになってよ」

こいつの過去などどうでもいいが、使える奴ならそれはありがたい。いちいち雑魚の相手までする手間が省けるからな。

ナハトムのウルミに刻まれた奴らを巻き戻し、笑顔をくれてやって私たちはその場を後にした。いちいち巻き戻すのは、私が来たことをここにいる化生共に知らせる為だ。私のことをこいつらが話せばそれだけ広まるからな。

私の気配だけでも恐らく伝わるが、中にはそれを感じ取れん奴らもいる。今はとにかくここにいる奴らをおびき寄せたいのだ。より騒ぎを大きくする為に。それでもサタニキール=ヴェルナギュアヌェが出てこないなら、私は本気で帰るつもりだった。

かくれんぼの相手などしていられるか。

日が暮れる頃、今度は小さなスーパーの跡地らしきところにトラックを停め、やはりネズミを捉えて夕食にした。別にこれで不満がある訳ではないのだが、ふと、山下沙奈の料理が頭をよぎる。彼女の料理が食いたいと私は無意識に思っているのか。とは言え、影の方の私は山下沙奈の料理を食ってるので、感覚共有すれば味わったことにはなるんだがな。ただ、それだと何かが違う気もしてしまう。

するとまた、食事時だというのに邪魔する奴らがいた。今度は人間ではない。化生共だ。ようやくお出ましか。トラックが数台、私たちを取り囲む。

「…ん?」

てっきり人間のなりをした奴が下りてくると思ったのだが、様子がおかしい。トラックがミシミシと音を立て始めたと思うと、身を捩るように蠢き、『立ち上がった』のだ。

「ははは! なんだお前ら!?」

私は思わず笑ってしまっていた。なにしろそいつらは、トラックをそのまま怪物にした子供の落書きのような不様な姿をしていたからだ。廃車のトラックを取り込んで己の体にしたのか。自動車などがロボットに変形するアニメだか何だかがあった気がするが、それよりはかなり不格好だった。しかし―――――

私に最も近いところにいた奴が、タイヤが歪んで出来た腕で殴りかかってきた。私はそれを受け止めたが、受け止めたつもりだったが、文字通りトラックに撥ね飛ばされたようにスーパーの建物の壁へと叩き付けられ、ガラガラと崩れ落ちた壁に埋もれたのだった。

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