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最終章
引き返せねーところ
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『今度こそとっととどこにでも行け』
呆然としてるナハトムに向かってそう言い放ち、私は再び町に向かって歩き出した。腐臭と死臭漂うそこは、私にとってはなかなか心地好い。
しかししばらく行くと、背後からトラックが近付いてきて、私の横に止まる。
ナハトムだ。奴がなぜかまた戻ってきたのだ。
「なんかもう、俺も引き返せねーところまで来ちまったみたいだから、せっかくだし一緒に行かせてくれよ」
だと。私は頭を抱えた。
「あのなあ。私はお前の為に言ってるんじゃない。お前ごときじゃ足手まといにしかならんから邪魔だと言ってるんだ。いい加減にしないと本当に食うぞ」
それでもナハトムは笑っていた。
「強盗なんかやってたから、どうせ俺の手も血で汚れてる。何人殺したか分からねえ。だからあんたに食われるなら、そんな最後もありかなって気がするよ」
あーもう、面倒臭い奴だ。勝手にしろ。
「取り敢えず町の中を適当に流せ。絡んでくる奴を片っ端から潰す」
トラックの助手席に座りながら私は言った。
「イエス、マム!」
ナハトムは軍人気取りでそう応える。もっともこいつには軍属の経験はないだろうがな。銃の撃ち方からしてデタラメだ。そこで私は、自分の髪を一本引き抜いて、ナハトムの頭にそれを着けた。その髪が赤く光を放ち、ナハトムがハッとした顔になる。
「な、なんですかこりゃ!? なんか知らねえけどすごく頭がすっきりして自分が強くなったみたいな気がする!」
「気がするじゃなくて実際に強くなってるがな。私の力の一部をお前に与えたのだ。これで多少は使い物になるだろう。だから貴様はこれから私の下僕だ。励め!」
そう、それは、魔法使い共の惑星に行った時に今川《いまかわ》らに与えたものと同じ力だった。今回はそれほど大した奴が相手でもないだろうから今のところはこれだけだ。もし必要ならばさらに強化もするがな。
そうこうしているうちに町の中をトラックは走っていた。町と言っても、中に入ってみてもやはり完全な廃墟だということが分かる。その廃墟に勝手に住み着いてる奴らがいるだけで、人間が住む町としては機能していない。
さっきまではビクビクしていたナハトムも、私の力を得たことで今は平然としていた。現金な奴だ。が、町に入って十分もしないうちにまた襲われたのだった。
今度はいきなり銃撃だ。しかし私は、トラックを巻き戻した際にちょっとした細工を施していた。と言っても、精々、戦車砲すらはじき返す程度だがな。ただ、砲撃では破壊されなくても衝撃そのものを消してしまう訳じゃないので、戦車砲の直撃など受ければまるで玩具の自動車の如く地面を転がるだろうが。
さりとて、アサルトライフル程度の銃弾ではそれこそゴムボールを投げられたほどのダメージもない。最初は焦っていたナハトムも、「すげえ…」と声を漏らしながらクーラーを効かしたトラックを悠然と走らせていたのだった。
呆然としてるナハトムに向かってそう言い放ち、私は再び町に向かって歩き出した。腐臭と死臭漂うそこは、私にとってはなかなか心地好い。
しかししばらく行くと、背後からトラックが近付いてきて、私の横に止まる。
ナハトムだ。奴がなぜかまた戻ってきたのだ。
「なんかもう、俺も引き返せねーところまで来ちまったみたいだから、せっかくだし一緒に行かせてくれよ」
だと。私は頭を抱えた。
「あのなあ。私はお前の為に言ってるんじゃない。お前ごときじゃ足手まといにしかならんから邪魔だと言ってるんだ。いい加減にしないと本当に食うぞ」
それでもナハトムは笑っていた。
「強盗なんかやってたから、どうせ俺の手も血で汚れてる。何人殺したか分からねえ。だからあんたに食われるなら、そんな最後もありかなって気がするよ」
あーもう、面倒臭い奴だ。勝手にしろ。
「取り敢えず町の中を適当に流せ。絡んでくる奴を片っ端から潰す」
トラックの助手席に座りながら私は言った。
「イエス、マム!」
ナハトムは軍人気取りでそう応える。もっともこいつには軍属の経験はないだろうがな。銃の撃ち方からしてデタラメだ。そこで私は、自分の髪を一本引き抜いて、ナハトムの頭にそれを着けた。その髪が赤く光を放ち、ナハトムがハッとした顔になる。
「な、なんですかこりゃ!? なんか知らねえけどすごく頭がすっきりして自分が強くなったみたいな気がする!」
「気がするじゃなくて実際に強くなってるがな。私の力の一部をお前に与えたのだ。これで多少は使い物になるだろう。だから貴様はこれから私の下僕だ。励め!」
そう、それは、魔法使い共の惑星に行った時に今川《いまかわ》らに与えたものと同じ力だった。今回はそれほど大した奴が相手でもないだろうから今のところはこれだけだ。もし必要ならばさらに強化もするがな。
そうこうしているうちに町の中をトラックは走っていた。町と言っても、中に入ってみてもやはり完全な廃墟だということが分かる。その廃墟に勝手に住み着いてる奴らがいるだけで、人間が住む町としては機能していない。
さっきまではビクビクしていたナハトムも、私の力を得たことで今は平然としていた。現金な奴だ。が、町に入って十分もしないうちにまた襲われたのだった。
今度はいきなり銃撃だ。しかし私は、トラックを巻き戻した際にちょっとした細工を施していた。と言っても、精々、戦車砲すらはじき返す程度だがな。ただ、砲撃では破壊されなくても衝撃そのものを消してしまう訳じゃないので、戦車砲の直撃など受ければまるで玩具の自動車の如く地面を転がるだろうが。
さりとて、アサルトライフル程度の銃弾ではそれこそゴムボールを投げられたほどのダメージもない。最初は焦っていたナハトムも、「すげえ…」と声を漏らしながらクーラーを効かしたトラックを悠然と走らせていたのだった。
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