JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

離脱

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『それ、これで最後だ』

空気をプラズマ化させて放ち、戦車をことごとく無力化して私は地面を蹴り、高度千メートルあたりまで跳び上がった。

取り敢えず隣の町辺りを目掛けて弾道飛行する間にブルカを巻きもどし、町はずれの荒れ地に着地する。

着地の衝撃で地面が抉れたが、まあいいだろう。自動車で通りがかった老人にも姿を見られたが気にしない。私は一切関知せず、涼しい顔で、と言ってもブルカのせいで他人からはまったく見えないが歩き出し、隣の町へと入っていった。

ゴーン…

ゴゴーン!

パリパリパリッッ

と、私への攻撃をきっかけに始まってしまった戦闘の音がここにまで届いてくる。まったく、ご苦労なことだ。

なお、こっちの町は、連中が睨み合ってた場所よりは後方ということになるだろう。戦闘に巻き込まれる危険性は十分にあるはずだが、この辺りの人間は戦争慣れしているのか、サタニキール=ヴェルナギュアヌェのせいで腑抜けになっていることを差し引いてもさほど気にしてる様子もない。大した奴らだよ。

もっともそれは、ここを支配していた独裁者にとって都合の悪くない人間達の町だったからというのもあるのかも知れないがな。私もテレビの報道でしか見てないが、宗教上の理由で対立している部族の人間が多い町などは、およそ人間の住むような場所とは言えないくらい酷いものらしい。それに比べればこの町は居心地が良いからなるべく動きたくないというのもあるかも知れん。

この町でもいろいろと見て回ったが、奴の気配はなかった。何度か男共に物陰に連れ込まれそうになっただけだ。ここの女なら男に対してあまり強く出られんのがあるとしても、私には何の関係もない。潰れない程度に加減して踏み付けてやって果てさせてやったわ。これで新しい世界が開けたならそれはそれで楽しいだろう。

しかし奴はどこに行ったんだ?。私を挑発して呼び出しておきながら何故姿を現さん? かくれんぼのつもりなら私は付き合わんぞ。

しかも、向こうに置いてきた私の影が見聞きしたものは私にも伝わるので、あっちで少々騒動が起こっていたこともあり、次の町で見付からなければ帰るつもりだった。腰抜けの相手などしておれん。

その時、運悪く私を襲おうとした強盗がいたので軽く捻ってやって自動車の運転をさせ、私は行き先を命じた。

「お前が絶対に足を踏み入れたくない町に行け」

と。

この手のお上品な町に奴の気配がないとしたら、後は犯罪者ですら二の足を踏むようなえげつないところくらいしかないだろう。

無論、行きたくないところへ行けというのだから強盗の男は、

「ふざけんな!」

とか反抗的に振る舞ったのだった。

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