JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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最終章

開戦

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薬物で錯乱した兵士が何を思ったか私目掛けて戦車砲を放ったが、それがいくら強力な武器だろうと、私にとっては豆鉄砲ほどの威力もない。意識を集中するだけでその存在が完全に否定され拒絶され、一ミリにも満たぬ空間が厚さ三メートルの鋼鉄の塊よりも固くなり砲弾はひしゃげて潰れ爆散した。無論、私には傷一つつかない。

だがその光景が、ブルカを着た生身の女が戦車の砲弾の直撃を受けても平然としているという異様な光景が、同じように薬物を使用していた他の兵士共のパニックを誘発し、有り得ない存在に対する恐怖となって弾けた。

「う…うわ、うわぁあわぁわああぁぁっっ!!」

「化け物ぉっっ!?」

攻撃命令すら出てないというのに奴らはありったけの銃弾と砲弾を私に浴びせかけてくる。

しかもそれが、相対していた側の軍隊の誤解を招き、

「奴らが撃ってきた! 反撃! 反撃しろ!!」

と、報復攻撃が始まってしまったのだった。双方の軍隊が睨み合う中に私がいたことで、戦闘が始まってしまったということだ。まったく、面倒臭い愚か者共だ。

などと考えつつも、豪雨のように降り注ぐ銃弾と砲弾の中ですら私は悠然と歩いた。それを目撃した奴らはどう語るかな。もっとも、薬物で頭のいかれた狂人の幻覚として誰も相手にもしないだろうが。

とは言え、

「まあ、せっかくのイベントだしな……」

ということで、私もちょっと付き合ってやった。ブルカをまとったままで砲弾を叩き落とし受け流し、あるいは受け止めて握り潰した。この際ついでだからと戦車へと迫り、右の拳を叩き付ける。

鋼鉄製のボディーは粘土の様にひしゃげ、中の機構がことごとく破損して使えなくなった。

「ふん…脆い機械だな」

中に乗ってた連中は衝撃で気を失ったようだが、死んではいない。いないが、この戦場で戦車の中で意識など失っててどうなるかなど、私の知ったことではないが。

「うわ…うわ……うわあぁぁあぁぁぁっっ!!」

素手で戦車を破壊する怪物を目の前にして、兵士達はますます恐慌の度を増していく。

それを黙らせるために撫でるにしても本当に手加減してやらないと人間というのはすぐに死ぬからな。しかもうっかり同士討ちとかまでやりかねん。他の奴らの銃撃を私の体で受け止めながら、一人一人撫でてやる。骨の一本や二本は大目に見ろ。

戦闘車両を蹴り飛ばし、ロケット砲の砲弾を受け止めて捻り潰しと遊んでいるうちに、ブルカがボロボロになってしまった。顔だけは辛うじて覆われているが、手足はすっかり丸見え。下に着ていた白いワンピースも覗いている。

『女の肌が見えることに煩い奴らがいるからな。そろそろ遊びも一段落としようか』

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