JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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春休みの章

所詮は作り話

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何度も言うが、<リアルな中世ヨーロッパ>を描写したらおよそこの感じになるだろう。そんな中で美少女とキャッキャウフフしてられると思うか? 

見てて楽しい美少女と出逢えて好かれてとかあると思うか? できの悪い農耕馬を無理矢理人間にしたかのような、二十代前半でありながら三十過ぎの藍繪正真らんかいしょうまよりも下手をしたら年上にも見えそうなムサい男と一緒の部屋に泊まるのが関の山だぞ?

そんな話を見たいのか?

フィクションなど所詮は作り話なんだから、『フィクションでまで世知辛い現実とか見たくない』と言うのなら、<リアルさ>なんか捨てちまえ。適当でいいんだよ適当で。

まあ、私なんかは、

<現代日本で自分がどれだけ楽な恵まれた暮らしをしてきたか思い知らされる殺人鬼(未遂)>

を見てるだけでも面白いがな。

こういう世界で生きていれば、そりゃ、

<自分を勝手にこの世に送り出しておいてちゃんと向き合おうともしない親>

ごときに精神を病むほどムカついてもいられないよな。自分が生きるのに必死過ぎで。

そして同時に、この世界では人間の命など安いものだ。生と死が隣り合わせでいつ死んでもおかしくないから、現代日本ほど拘ってもいられない。誰が死んでも、その時は悲しむかも知れんが、いつまでも引きずっていられない。

『誰かを苦しめてやりたいから人を殺す』

なんてのがそもそも大してダメージにならんかったりするのだ。

藍繪正真らんかいしょうまも無意識のうちにそれは感じ取っているのか、それとも今の状況に馴染むのに手間取っていてそれどころではないのか、殺人に対する欲求がすっとんでしまっているようだ。

ともあれ、せっかくベッドに横になったのにシラミに噛まれて痒くてほとんど寝られないまま、藍繪正真らんかいしょうまは次の朝を迎えたのだ。

「ひでぇ顔だな。寝られなかったのか?」

ガラスの入っていない窓を開けて日の光を取り込んだ部屋の中で、デインは藍繪正真らんかいしょうまの顔を見て言った。

確かに昨日とはまるで別人のようにやつれた男の姿がそこにあった。

「煩い……」

そう言いかえすものの、それすら力がない。

「ま、俺はこれからまた他の領主様のところに行って兵士として雇ってもらうつもりだからよ。あんたは旅を続けるんなら好きにしな」

そう言ってデインは先に宿を出て行った。二人分の代金を払って。

と言っても手持ちがなかったからな。私が<力>で作った金だ。さりとてこの世界の金を完全に再現してるから、実質本物ではある。

「くそっ……どうすりゃいいんだよ……」

どうすりゃいいも何も、人間を殺しまくりたかったんだろう? だったらさっそく殺しまくればいい。どうせこの町も近々戦争に巻き込まれて住人の大半が犠牲になるだろう。

今、お前が手当たり次第に殺しても、大して変わらんぞ。

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