JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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春休みの章

地球と呼ばれている惑星

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巻き戻りによって疲労をリセットしてからさらに二時間後、ようやく町に着いた。

「トルカの町だ」

そう言われてやはりへとへとになっていた藍繪正真らんかいしょうまは顔を上げるが、その視線の先にあったものは、現代日本人の感覚であれば<町>とは名ばかりの、せいぜい<村>と呼ぶのがいいところであろう貧相な集落だった。

まばらに建つ建物も決して立派とは言えず、いわゆるバラックに毛が生えた程度といった感じか。

『これのどこが<町>だよ……』

藍繪正真らんかいしょうまはそう思ったが、口には出さなかった。そしてここまで来る間に、歩きながらいろいろ考えた。

『もしかして、俺、異世界転移されたのか……? 高校生くらいの女をろうとしたとこまでは覚えてんだが、その後なんかあってここに転移させられた感じ……? マジでそんなことあるんだ……?』

とかなんとかな。

しかし、違うぞ。<転移>じゃなく<転生てんせい>だ。ちなみに宗教などで言われる<転生てんしょう>とも違う。

現代日本人として生まれ生きた藍繪正真らんかいしょうまの本来の肉体は、私の呪いを受けて死んだ。完全にな。今のこいつの体は、私が元の肉体を再現しただけの別物だ。

加えてここは、こいつが生まれた地球からは六百億光年ばかり離れた、別の<地球アースと呼ばれている惑星>だ。なので、元の地球からは観測はできない。あちらの地球の技術で観測可能な宇宙の範囲は半径約四百五十億光年とされてるからな。ちなみに今この瞬間も、実はこの惑星が存在する空間そのものが光速を超える速度であちらの地球からは遠ざかっている。宇宙の膨張に合わせてな。

また、宇宙には、物質やエネルギーの偏りが非常に似通った部分が無数にあり、そこでは地球と同じような生命が生まれ、同じような経緯を辿る可能性が高くなるのだ。

なお、以前に赤島出姫織あかしまできおりらと行った<魔法の国>があった惑星が約二千万光年離れてたから、それよりもはるかに遠い。

だがそれでも、いわゆる平行世界などとは違い、物理的に同じ世界に存在する、別の地球ということだな。もっとも、魔法の国でさえ肉体そのものを一瞬で転移させるには遠すぎるくらいだし、こちらに至ってはそもそも物理的に同じ世界に存在しながらも同時に現在の地球の技術では物理的に辿り着くことができない。なので実質的には<異世界>と呼んで差支えないだろう。

魔法の国が使っていたような<ゲート>を用いるのが唯一の方法だが、残念ながらここでは魔法の類は発達してない。単純に様々な国が乱立して覇を競い合ってる状態である。まあ、文明レベルから察するに西ローマt帝国が滅亡した後くらいと言ったところか。


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