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怨嗟の章
新しい人間の社会
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アリーネとは、もう既に決別を済ませていた。彼女の首筋に軽く噛み付いて押し倒し、彼女の心を蹂躙したことで。
そして、それを彼女が克服したことで。
だが、綾乃は、自身に背負わされた罪の重さに、責任の重さに、潰れかかっていた。
自分達がこの世界を終わらせてしまった事実に。
幼い子供達にその片棒を担がせてしまった事実に。
そして、その上でなおも生きていかなければならないという事実に。
しかしそれが、黒い獣に対する憎悪によって撥ね退けられることになった。
黒い獣に対する憎しみが、怒りが、彼女の命を回し、強くした。
それがあれば、これからも彼女は生きていくだろう。その綾乃に支えられて、みほちゃんもエレーンもシェリーも生きていけるに違いない。
そうして生き延びて、やがて他の生き延びた人間達と合流して、そこで小さな社会を作ることになる。
それが、新しい人間の社会の起点となるのだ。
「……」
黒迅の牙獣は、そんな人間達を見降ろしていた。成層圏のさらに上、中間圏と呼ばれる辺りで。
「もういいのか…?」
不意に、背後から声が掛けられる。けれど、黒迅の牙獣はそれを察していた。
その声に振り返りつつ頭を下げ、服従の姿勢を見せる。
まさしく<犬>のように。
「そうか。なら、しばらくここには用はない。さすがに数が少なすぎる。もう少し増えてもらわないと迂闊に触れられん。絶滅されてもつまらんしな。
そういうわけで私は、向こうの地球の様子を見に行く。ついてこい」
「……」
黒迅の牙獣はもはや何も言わず、黙って頷き、後に続いた。
数千年後に、再びこの<主人と獣>が姿を現すことになるのだが、それはもう別の物語である。
そして、それを彼女が克服したことで。
だが、綾乃は、自身に背負わされた罪の重さに、責任の重さに、潰れかかっていた。
自分達がこの世界を終わらせてしまった事実に。
幼い子供達にその片棒を担がせてしまった事実に。
そして、その上でなおも生きていかなければならないという事実に。
しかしそれが、黒い獣に対する憎悪によって撥ね退けられることになった。
黒い獣に対する憎しみが、怒りが、彼女の命を回し、強くした。
それがあれば、これからも彼女は生きていくだろう。その綾乃に支えられて、みほちゃんもエレーンもシェリーも生きていけるに違いない。
そうして生き延びて、やがて他の生き延びた人間達と合流して、そこで小さな社会を作ることになる。
それが、新しい人間の社会の起点となるのだ。
「……」
黒迅の牙獣は、そんな人間達を見降ろしていた。成層圏のさらに上、中間圏と呼ばれる辺りで。
「もういいのか…?」
不意に、背後から声が掛けられる。けれど、黒迅の牙獣はそれを察していた。
その声に振り返りつつ頭を下げ、服従の姿勢を見せる。
まさしく<犬>のように。
「そうか。なら、しばらくここには用はない。さすがに数が少なすぎる。もう少し増えてもらわないと迂闊に触れられん。絶滅されてもつまらんしな。
そういうわけで私は、向こうの地球の様子を見に行く。ついてこい」
「……」
黒迅の牙獣はもはや何も言わず、黙って頷き、後に続いた。
数千年後に、再びこの<主人と獣>が姿を現すことになるのだが、それはもう別の物語である。
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