JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

大災害

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錬治達が立っているのは、見渡す限りの荒れ地。

これが、クォ=ヨ=ムイの口車に乗せられて『人類を、世界を救う為だ』と二百万倍に加速された状態で動き回った結果……

『くそ……っ!』

と思わず毒づくけど、口から洩れるのはやっぱり「ヴウッ!」って感じの唸り声だった。

だけど綾乃達が助かったのは、せめてもの救いなのか……
 
『……ううん、違う…! そんな風に割り切れるものか……!

だいたい、いくら命が助かったって、彼女達はこれからこんなになった世界で生きていかなきゃいけないんだ』

被害がどれほどのものになるのか見当も付かない。果たしてここから立て直すことができるのかどうかも分からない。三百体の怪物を倒す為に世界中に移動した。世界規模でこれと同じくらいの被害が出てるはずだった。しかも普通の人達にとってはまったく原因不明の大災害でもある。

『もしかしたら、敵対してる国からの攻撃だと考えて報復攻撃に出る国もあったりするかもしれない。そうすれば世界的な戦争になる可能性だってある。

そんなことになったら……

あの怪物を放っておいた場合とどっちが被害が大きかったんだ……?』

分からない。錬治にはまったく分からなかった。

でもその時、呆然としていた彼の触角みみに、アリーネの怒声が。

「You Bastard!!」

ハッと意識を向けると、その手には何か黒いもの……!

『拳銃…!?』

拳銃だった。どこで手に入れたのか……いや、錬治達からしたら周囲は止まってるみたいなものだ。意識すればどこへだって移動できるのだから、銃が普通に流通しているところに行った時についでに拝借ってことだってできてしまうのか。

アリーネなら悪用はしないだろうとは思いつつも、やっぱりそうやって勝手なことをすることの怖さも錬治は感じてしまった。

でも今はそれどころじゃない。

「グゥアッ!!(やめて!!)」

アリーネはクォ=ヨ=ムイに対する憤りからそうしたんだろうが、自分がこうなってみて錬治は改めて実感した。

『この邪神には絶対に敵わない』

って。

『これに歯向かえば大変なことになるだけだって。悔しいけど、許せないけど、こいつは<災害>と同じなんだ。人間の力ではどうすることもできない、ただやり過ごすしかできないものなんだって。

マンガやアニメみたいに抵抗したら、盛り上がる展開なんて何一つなく一瞬で存在自体をなかったことにされる相手なんだって……』

パン! パンッ!

小さな爆発音が空気を叩く。アリーネがクォ=ヨ=ムイに向けて銃の引き金を引いたからだ。

だから錬治は、空気を裂いてクォ=ヨ=ムイ目掛けて奔る小さな塊に飛び掛かり、咄嗟にそれを口に咥えたのだった。

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