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怨嗟の章
爆心地
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『あれは……!?』
錬治の視界に捉えられたもの。それは、透明な球状の<何か>に包まれた綾乃達が必死に抱き合って、お互いを守ろうとしてる姿だった。
さすがに現役軍人であるからかアリーネだけは周りの状況を見ていたようだが、それでもやはり、みほちゃんやシェリーやエレーンを守ろうとしてか庇う姿勢をとっていた。
綾乃も、みほちゃんやエレーンやシェリーを庇うように抱き締めてたものの、さすがに硬く目を瞑ってただただ耐えている状態だった。
それからどれだけの時間が過ぎたのか。
ほんの数十秒だった気もするし、何十分もかかったような気もするし、よく分からない時間が過ぎて、ようやく爆発のような衝撃波が収まってきた。
それでも、ものすごい煙なのか土埃なのかが轟々と渦巻いていて、何も見えない。
そして、その煙だか土埃だかがようやく収まってきたのは、こちらはそれこそはっきりと十分近くかかってからだっただろう。
「……!?」
やっとそれも薄れてきた時、眼前に広がっていた光景は、錬治達がまったく見たこともないものだった。
『……な…あ…?』
元々もう喋れなくなっていたが、それでも『声も出ない』という状態だった。なにしろそこにあったのは、コンクリートとアスファルトに覆われた見慣れたそれじゃなく、何百メートルも先まで、いや、何キロも先まで、何一つ視界を遮るもののない、ただ瓦礫が積もっただけの荒野だったのだ。
本当に『何もない』状態だった。家も、ビルも、何も。文明の痕跡と言えそうなものすら満足に見て取れない、見渡す限りのただの瓦礫の荒野。
よく見ると辛うじて、瓦礫そのものが<文明の痕跡>だと分かりつつも、それすら徹底的に破壊されていて、そうだと言われなければすぐには気付かないかもしれない。
そのさらに向こう、もしかすると一キロくらい先までいったところでようやく、頑丈そうなビルの根元部分の残骸らしきものがいくつか見られる状態だった。
『これが、二百万倍に加速された僕達が動き回った結果……?』
呆然と、<獣>になった錬治はただただ呆然とその光景を見詰めていた。
そんな彼の<触角>に捉えられた声。
「みほちゃん…? みほちゃん……!」
綾乃だった。綾乃がみほちゃんの体を抱きかかえ、焦ったように声を掛けている。
そんな彼女の腕の中に、力なく包み込まれている小さな体。
けれど、錬治には分かった。彼の触角には、しっかりとみほちゃんの鼓動が捉えられていたし、呼吸も体温も普通なのが感じ取られ、
『良かった。気絶してるだけか……』
と、ホッとしたのだった。
錬治の視界に捉えられたもの。それは、透明な球状の<何か>に包まれた綾乃達が必死に抱き合って、お互いを守ろうとしてる姿だった。
さすがに現役軍人であるからかアリーネだけは周りの状況を見ていたようだが、それでもやはり、みほちゃんやシェリーやエレーンを守ろうとしてか庇う姿勢をとっていた。
綾乃も、みほちゃんやエレーンやシェリーを庇うように抱き締めてたものの、さすがに硬く目を瞑ってただただ耐えている状態だった。
それからどれだけの時間が過ぎたのか。
ほんの数十秒だった気もするし、何十分もかかったような気もするし、よく分からない時間が過ぎて、ようやく爆発のような衝撃波が収まってきた。
それでも、ものすごい煙なのか土埃なのかが轟々と渦巻いていて、何も見えない。
そして、その煙だか土埃だかがようやく収まってきたのは、こちらはそれこそはっきりと十分近くかかってからだっただろう。
「……!?」
やっとそれも薄れてきた時、眼前に広がっていた光景は、錬治達がまったく見たこともないものだった。
『……な…あ…?』
元々もう喋れなくなっていたが、それでも『声も出ない』という状態だった。なにしろそこにあったのは、コンクリートとアスファルトに覆われた見慣れたそれじゃなく、何百メートルも先まで、いや、何キロも先まで、何一つ視界を遮るもののない、ただ瓦礫が積もっただけの荒野だったのだ。
本当に『何もない』状態だった。家も、ビルも、何も。文明の痕跡と言えそうなものすら満足に見て取れない、見渡す限りのただの瓦礫の荒野。
よく見ると辛うじて、瓦礫そのものが<文明の痕跡>だと分かりつつも、それすら徹底的に破壊されていて、そうだと言われなければすぐには気付かないかもしれない。
そのさらに向こう、もしかすると一キロくらい先までいったところでようやく、頑丈そうなビルの根元部分の残骸らしきものがいくつか見られる状態だった。
『これが、二百万倍に加速された僕達が動き回った結果……?』
呆然と、<獣>になった錬治はただただ呆然とその光景を見詰めていた。
そんな彼の<触角>に捉えられた声。
「みほちゃん…? みほちゃん……!」
綾乃だった。綾乃がみほちゃんの体を抱きかかえ、焦ったように声を掛けている。
そんな彼女の腕の中に、力なく包み込まれている小さな体。
けれど、錬治には分かった。彼の触角には、しっかりとみほちゃんの鼓動が捉えられていたし、呼吸も体温も普通なのが感じ取られ、
『良かった。気絶してるだけか……』
と、ホッとしたのだった。
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