JC邪神の超常的な日常

京衛武百十

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怨嗟の章

DEMON

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『…お願いできますか…?』

正直、軍人であるアリーネに出会えたのは本当に幸いという感じだった。彼女になら任せても大丈夫なんじゃないかと思えた。なのに、

「誰がそんなこと許可するか」

と、クォ=ヨ=ムイが吐き捨てるように言う。

「!?」

「Shit!!」

それに対して綾乃もアリーネも、鬼のような形相で睨み付けた。

でもここでクォ=ヨ=ムイを罵っても問題が拗れるだけなのは錬治にも分かる。だから、

「あなたが許可しなくても、僕が<お願い>するんです。僕が彼女も連れて怪物のいるところに出向いて、彼女に手伝ってもらいます。それなら止められないはずだ」

と、決して攻撃的ではないがきっぱりと言った。

もっともそんなのはただの<はったり>でしかない。錬治達が動けるかどうかというのもクォ=ヨ=ムイの匙加減一つだろうから、アリーネを元のスピードに戻してしまうことだってきっと造作もない。これは正直、<賭け>だった。

するとクォ=ヨ=ムイは、

「…は! いいだろう。お前がそこまで言うなら好きにしろ」

肩を竦めながらそう言った。しかしすぐにギロリと錬治を睨み付けて、

「ただし、条件がある」

と付け足した。

「…条件…?」

彼がごくりと喉を鳴らしながら訊き返すと、ニヤァっと邪悪極まりない笑顔を浮かべてクォ=ヨ=ムイが言う。

「この女に始末させるのは、百匹までだ。それを一匹でも超えたら、お前の癌を治してやるという話はなかったことにしてもらう」

その言葉に、

「…そんな!?」

と綾乃は顔を青褪めさせ、

「何の話でス?」

とアリーネは首を傾げた。

「横暴よ! そんなのって…! そんなのって……!!」

綾乃が、握り締めた発泡スチロールに爪が食い込むほど力を込めてクォ=ヨ=ムイを睨みつける。目には涙も溜めて。

だけど事情を知らないアリーネにはピンときていないようだった。だから、

「怪物退治と引き換えに、こいつの癌を治してやると条件を出したのだ。だがこいつはその役目をお前に丸投げしようとしている。だったらもう、その条件は成立せんよなあ」

と、クォ=ヨ=ムイがものすごくムカつく笑顔でアリーネに向かって言い放った。

「Fuck!! あなたはそれでも人間でスか!?」

などとアリーネは憤るが、クォ=ヨ=ムイはまったくとりあわない。

「残念だったな。私はお前達の言うところの<神>だ。元より人間などではない」

そう言うだろうなというそのままを口にした。

「!? <神>? 何が<神>ですか、この世界の<神>は<主《GOD》>のみデス!! 神を名乗るお前はただの<悪魔《DEMON》>デス!!」

吠えるアリーネに錬治は思った。

『ああ、一神教であるキリスト教の人達ならこの反応は普通なんだろうなあ……』

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